垂直方向における0.05度相当の角度分解能については、前述の通り、垂直方向のdToF画素の増加によるものだ。これで250mの距離にある25cmの物体検知も可能となった。なおdToF画素は、最小3×3(水平×垂直)のSPAD画素を組み合わせたものとしている。センサーの設定では水平が3〜最大19で、垂直は3か6に変更可能で「LiDARメーカーの要望に合わせ設定を調整できる」という。
距離分解能についても新たに開発した独自回路によって、5cm間隔まで向上した。この独自回路は、各SPAD画素のデータを個別に処理し、距離を算出するというものだ。つまり、3×3のSPAD画素を組み合わせたdToF画素の垂直方向の3画素を別々に少しタイミングをずらしてデータを取り込んでいる。IMX459ではこの3画素をまとめて一回でデータを取り込んでいたため、距離分解能は15cm間隔にとどまっていた。
最後に、光子検出効率についてだ。下図はSPAD画素の断面図だが、まず上部のレンズはIMX459では1画素に1個だったところを増加、さらに画素における光の入射面と底面に凹凸を設ける「Dual diffraction structure」を新たに採用した。これによって入射光を回折させて吸収率を高め、車載LiDARのレーザー光源として広く普及している940nmの波長に対して、37%の高い光子検出効率を実現。10万lux以上の高照度の背景光環境においても、最長300m先にある対象物を高精度に検知/認識することが可能となったとしている。
なおIMX459では推奨光源波長を905nmとしていたが、今回のIMX479では940nmに変更している。この点について由井氏は「背景光への影響や使用するレーザーの特性などを考え940nmを推奨光源波長と選択しているが、905nmでも対応可能で、同様に高い性能が発揮できる」と説明している。
ソニーセミコンは今回、上記のように高画素数かつ高速、高精度な測距を実現する回路を搭載しつつ価格(サンプル価格)は3万5000円まで抑えている。由井氏は「高解像度の要求がある一方、大型にしすぎればコストは上がり、またLiDARの大きさにも響く。詳細は言えないがある程度工夫することで、このチップサイズに抑え込むことに成功した」と説明していた。
IMX479は自動車向け電子部品の信頼性試験基準「AEC-Q100」および機能安全要求レベル「ASIL-B」に対応。なお、製品はパッケージではなくベアチップの状態での販売となるという。
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