Patentixは、次世代のパワー半導体材料として注目されているルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)結晶膜に対し、イオン注入法によりドナー不純物を添加することで、n型導電性を付与することに成功した。これにより、複雑な構造を有するパワー半導体デバイスの作製が容易になる。
Patentixは2025年7月、次世代のパワー半導体材料として注目されているルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)結晶膜に対し、イオン注入法によりドナー不純物を添加することで、n型導電性を付与することに成功したと発表した。これにより、複雑な構造を有するパワー半導体デバイスの作製が容易になるという。
r-GeO2は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)に比べ、大きなバンドギャップ(4.68V)を持ち、高耐圧で高出力、高効率なパワー半導体デバイスを実現できるとみられている。
Patentixはこれまで、独自の成膜技術である「PhantomSVD法」を用い、成膜中にドナー不純物のアンチモン(Sb)を添加し、電子密度が約1020cm-3というr-GeO2のn型導電性を制御することに成功してきた。この技術を用いて試作したSBD(ショットキーバリアダイオード)の動作も確認している。
今回は、イオン注入による不純物のドーピングに取り組んだ。イオン注入法を用いることで、成膜中にドナー不純物を添加する従来方法に比べ、ドーピングの濃度や位置、深さなどを高い精度で最適化できる。これによって、複雑な構造を有するパワー半導体デバイスの製造が容易になるという。
実験では、PhantomSVD法でTiO2基板上にアンドープのr-GeO2薄膜を作製し、その上でSbをイオン注入した。イオン注入の前後でr-GeO2の膜厚を測定したが、有意な変化は見られなかったという。ルチル構造が保持されていることも確認した。
また、イオン注入でドナー不純物をドーピングした領域では、シート抵抗が下がることも分かった。イオン注入によって添加されたドナー不純物が活性化したことによって、r-GeO2薄膜にn型導電性が付与されたとみている。
イオン注入した領域に電極を形成して容量電圧(C-V)を測定したところ、イオン注入した領域はn型の導電性を示した。また、測定で得られたC-V特性からドナー不純物密度を解析した。この結果、r-GeO2膜中のドナー不純物は、イオン注入プロセスによって、膜の表面近傍に導入されたものであることが分かった。
今後は、導入されたドナー不純物がSbであるかどうかを検証していく。また、r-GeO2膜中にSbがどれくらい導入されたかも解明していく予定である。
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