立命館大学と京都大学、物質・材料研究機構の研究チームは、xを0.53付近に調整したルチル型(r-)GexSn1-xO2薄膜を、r-TiO2基板上に格子整合(格子整合エピタキシー)させることで、薄膜内の貫通転位密度を極めて小さくすることに成功した。
立命館大学と京都大学、物質・材料研究機構の研究チームは2024年1月、xを0.53付近に調整したルチル型(r-)GexSn1-xO2薄膜を、r-TiO2基板上に格子整合(格子整合エピタキシー)させることで、薄膜内の貫通転位密度を極めて小さくすることに成功したと発表した。この薄膜を用いたショットキーバリアダイオード(SBD)は、±5Vの電圧を印加したところ、約105の整流比を示した。
r-GeO2とr-SnO2の混晶であるr-GexSn1-xO2は、3.8〜4.4eVのバンドギャップ変調や良好な電気伝導特性を示すことが分かっている。このため、パワーデバイスへの応用が期待されている。ただ、r-TiO2とr-GeO2、r-SnO2、r-GexSn1-xO2の格子定数が一致しないため、基板と薄膜の界面において転位が形成される。特に貫通転位が、1010cm−2程度となるため、高耐圧動作時には課題となっていた。
研究チームは今回、r-GexSn1-xO2のx値によって、格子定数が一致することに着目した。第一原理計算により、x=0.53程度でr-GexSn1-xO2とr-TiO2のa軸方向において格子定数が一致することを確認した。そこで、ミストCVD法を用い、x=0.53付近のr-GexSn1-xO2薄膜をr-TiO2(001)基板上に作製し、格子整合させることにした。
作製したr-GexSn1-xO2(x=0.49〜0.56)は、膜厚の範囲が48〜478nmで二次元的に成長し、表面は極めて平らであることを確認した。これはフランク・ファンデルメルヴェ機構による結晶成長を示しており、r-GexSn1-xO2とr-TiO2の格子不整合は極めて小さいことが分かった。
膜厚48nmのr-Ge0.55Sn0.45O2薄膜について、構造解析を行った。X線回折(XRD)測定の結果、「r-Ge0.55Sn0.45O2薄膜が面内および面外方向に対して基板と同一方向に配向している」ことや、「r-Ge0.55Sn0.45O2薄膜内に明白な回転ドメインが存在しない」ことが分かった。さらに、逆格子マッピング測定の結果、「r-Ge0.55Sn0.45O2薄膜がコヒーレント成長している」ことも判明した。
また、制限視野電子回折パターンから、「r-Ge0.55Sn0.45O2薄膜が、面内および面外方向に対して基板と同一方向に配向している」ことを確認した。複数箇所における透過型電子顕微鏡(TEM)像でも転位線は見られなかった。さらに、高角度散乱暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)で界面を観察したところ、基板と薄膜のカチオン(Ti、Ge、Sn)位置が揃っていることを確認した。これらの結果から、r-Ge0.55Sn0.45O2薄膜がr-TiO2基板と格子整合し、薄膜内の転位密度は大幅に低減されることが分かった。
研究チームは、膜厚110nmのr-TiO2(001)基板上に格子整合させたr-Ge0.49Sn0.51O2薄膜を用いて、横型SBDを作製した。このSBDに±5Vの電圧を印加したところ、約105程度の整流比となった。
今回の研究成果は、立命館大学総合科学技術研究機構の金子健太郎教授・RARAフェロー/Patentix取締役CTO、京都大学大学院工学研究科の高根倫史博士後期課程学生、田中勝久同教授、物質・材料研究機構の大島孝仁主任研究員、原田尚之同独立研究者らによるものである。
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