東京大学は、わずか1Vの駆動電圧で毎秒1.6Gビットという高速データ変調を可能にした「アクティブメタサーフェス」を開発した。CMOS回路による直接駆動や2次元並列化も可能なため、次世代の光通信やイメージングなどへの応用が期待できるという。
東京大学大学院工学系研究科の相馬豪大学院生と種村拓夫教授らは2025年9月、わずか1Vの駆動電圧で毎秒1.6Gビットという高速データ変調を可能にした「アクティブメタサーフェス」を開発したと発表した。CMOS回路による直接駆動や2次元並列化も可能なため、次世代の光通信やイメージングなどへの応用が期待できるという。
光学メタサーフェスは、光の波長より小さい構造体を薄い基板上に並べた光学素子で、透過光や反射光の波面を自在に制御できる。ただ、実用化されているメタサーフェスは、作製後にその機能を変えることができない。
これに対しアクティブメタサーフェスは、電気的に再構成が可能なため、反射率や透過率をフィールドで変えることができる。ところが電気的に再構成するには数十V以上の駆動電圧を必要とするなど、実用化に向けては課題もあった。
そこで今回は、シリコンの微細構造と有機電気光学材料を用い、新たなアクティブメタサーフェスを開発した。作製したアクティブメタサーフェスは、厚み400nmのn型シリコンからなる格子構造を周期的に配置し、格子の長手方向(y方向)には微細な凹凸形状を施した。
しかも、突起物の幅を1つおきに変化させる(w+>w-)ことで、対称性を破る構造とした。これにより、シリコン格子間の小さいスロット領域内に入射光を閉じ込めて共振させることが可能となった。さらに、スロット内に有機電気光学材料を埋め込みシリコン格子を電極として用いれば、外部より電圧を印加できる。有機電気光学材料に電界がかかると屈折率が変化する。これによって反射光や透過光の強度が変調されるという。
実験では、電圧を変えながら反射率スペクトルを測定した。この結果、試作した素子は小さな変調電圧で、大きな反射率変調率が得られることを確認した。また、試作したアクティブメタサーフェスは、共振器の両側に分布ブラッグ反射器を集積した。これによって、共振器のサイズを10μm角まで小さくでき、1Vの駆動電圧で毎秒1.6Gビットという高速なデータ変調を実現した。
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