東京大学と奈良先端科学技術大学院大学の共同研究グループは、新たに開発した結晶化酸化物半導体の形成技術を用い、「ゲートオールアラウンド(GAA)型酸化物半導体トランジスタ」を開発した。酸化物半導体デバイスのさらなる高集積化と高機能化を実現できる可能性が高まった。
東京大学と奈良先端科学技術大学院大学の共同研究グループは2025年6月、新たに開発した結晶化酸化物半導体の形成技術を用い、「ゲートオールアラウンド(GAA)型酸化物半導体トランジスタ」を開発したと発表した。酸化物半導体デバイスのさらなる高集積化と高機能化を実現できる可能性が高まった。
低温形成が可能で高性能な酸化物半導体のトランジスタは、フラットパネルディスプレイに用いられてきた。酸化物半導体を集積回路に応用することも研究されているが、トランジスタの微細化に向けては、GAA構造を実現するのが難しかったという。
研究グループは今回、原子層堆積(ALD)法を用い酸化物半導体「InGaOx(IGO)」のナノ薄膜を形成した。そして熱処理を行い、平たんで均一に結晶化したIGOの成膜に成功した。この技術を用いて、IGOのナノ薄膜と犠牲層の間に、高いエッチング選択比を実現するなどして、GAA型酸化物半導体トランジスタの製造に必要となるプロセスを開発した。
試作したデバイスの特性を評価した。この結果、オン電流が326μA/μm(電源電圧1.2V)、トランスコンダクタンスが689μS/μmで、ノーマリオフ動作のGAA型酸化物半導体トランジスタを実現した。バイアスストレスしきい値電圧シフトも、単一ゲートトランジスタに比べ大幅に改善され、高い信頼性が得られることを確認した。
研究グループは今後、量産可能な製造プロセスの開発を行うとともに、特性ばらつきの評価と改善に取り組む計画である。
今回の研究成果は、東京大学生産技術研究所の小林正治准教授と奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質創成科学領域の浦岡行治教授、高橋崇典助教らによるものである。
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