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ポップアップ切り紙構造の熱電発電デバイスを開発、早稲田大高い柔軟性と発電性能を両立

早稲田大学の研究グループは、薄いフィルム基板に切り込みを入れて立体化する「ポップアップ切り紙構造」を考案、これを用いて熱電発電デバイス(TEG)を開発した。高いフレキシブル性能と発電性能を備えた熱電発電デバイスを実現できる。

» 2025年10月28日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

人体など曲面熱源に対応、曲率半径0.1mm、延伸1.7倍の変形が可能

 早稲田大学理工学術院の岩瀬英治教授や寺嶋真伍講師らによる研究グループは2025年10月、薄いフィルム基板に切り込みを入れて立体化する「ポップアップ切り紙構造」を考案、これを用いて熱電発電デバイス(TEG)を開発したと発表した。高いフレキシブル性能と発電性能を備えた熱電発電デバイスを実現できる。

 IoTデバイスやウェアラブル機器では、熱や振動、光など身の回りにある微小なエネルギーを電気に変換して利用する環境発電技術が注目されている。例えば体温や機械などから排出される熱を利用する熱電発電もその1つだ。

 既に、シリコーンゴムなどを基板材料に用いることで、曲面にもフィットするフレキシブルな熱電発電デバイスなどが開発されている。ところが、ゴム材料は熱抵抗が高いため期待する発電量が得られないなど課題もあった。このため、材料に依存せず「折り紙」や「切り紙」など構造を工夫することで、柔軟性を持たせる研究も進んでいるが、これらの方法は熱源への接触面が少ないなど、熱電発電デバイスには不向きだったという。

 そこで研究グループは、フレキシブル性能と高い発電性能を両立させるため、「ポップアップ切り紙構造」を新たに考案した。非伸縮材料の薄いフィルム基板に切り線パターンを入れ、平面状態で熱電素子を実装した。その後、立体的に展開することで屈曲性や伸縮性を実現した。

曲げ変形や伸縮変形を可能にしたポップアップ切り紙型熱電発電デバイスのイメージ[クリックで拡大] 出所:早稲田大学

 試作した熱電発電デバイスについて性能評価を行った。この結果、曲げや延伸など変形を行っても平面状態と同等の発電性能が得られることを確認した。しかも、曲率半径0.1mmの変形や1.7倍の延伸変形にも対応できることが分かった。直角に曲がった熱源にも貼り付けて利用できるという。

 試作した熱電発電デバイスに無線送信回路を接続し、センシングの実証を行った。人体に貼り付け、体温と空気の温度差で発電し、測定したデータを無線で送信することにも成功した。

各種変形時に計測した性能のデータ[クリックで拡大] 出所:早稲田大学

 研究グループによれば、開発したポップアップ切り紙構造は、細長く硬い熱電素子だけでなく、カーボンナノチューブ(CNT)シートなど薄膜の熱電素子にも適用できるという。

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