通信領域ではケーブルの重量と複雑さが課題となる。TIはSPE(Single-Pair Ethernet)によってリアルタイム性を維持しながら重量とコストを軽減し、故障点も削減できるとしている。
センサーやカメラについては暗闇や粉じんといった悪環境での動作が課題だが、TIのミリ波センサーは悪環境に強みを持っているという。これもADAS向けに開発してきた技術で、既に数百万個の出荷実績がある。カメラとは異なりプライバシーの問題も解消できることが特徴だ。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)では、安全性と稼働時間という重要な要素がトレードオフになってしまう傾向にある。TIは高精度なセル監視によって安全性と稼働時間を両立させているという。「高精度なセル監視によってバッテリーがどれくらいもつのか正確に把握でき、工場全体のロボットの運用効率を最大化できる」(初山氏)
初山氏は「これに加えて、機能安全がTIの最大の強みの1つで、提供できる真の価値でもある」と述べた。TIの技術者だったJack Kilby氏がICを発明したのは、産業用ロボットが現場に投入される3年前、1958年のことだ。「当時、ICは部品の数という暴君から人類を解き放つという目的があった。現在、ヒューマノイドロボット開発の最大の暴君は機能安全だ。多くのICをそろえた上で、それらが安全であることの証明が求められる。膨大なレポート作成や認証機関とのやりとりは貴重なエンジニアリングリソースを奪い、イノベーションのブレーキとなる」(初山氏)。TIは製品と合わせてセーフティマニュアルや機能安全の認定書を提供している。
TIは実際に、ヒューマノイドロボットメーカーであるApptronikと戦略的パートナーシップを締結している。Apptronikの挑戦は、膨大な数の部品を小さいサイズの筐体に収めることと、人間の近くで動作するための安全性だった。これに対してTIは機能安全の方法論のディスカッションや部品選定から携わったという。
初山氏は「TIは単なるサプライヤーではなく設計の根幹を担うパートナーだ」と述べた。
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