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TSMCでも足りないAI需要 Rapidusにチャンスかアナリストの見解(1/2 ページ)

TSMCは2026年、生産能力拡大に向けて520億〜560億米ドル規模という記録的な設備投資を予定しているが、それでもAIチップ需要への対応には不十分とみられている。アナリストは、TSMCの競合企業が参入機会を得る可能性を指摘している。

» 2026年01月22日 16時00分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 TSMCは2026年、生産能力拡大に向け、520億〜560億米ドル規模という記録的な設備投資を予定している。しかし、それでもAIチップ需要への対応には不十分とみられている。同社の2026年の設備投資は、前年比37%増加する見込みで、この先の3年間も引き続き投資を拡大していく考えであることを示唆している。

記録的な設備投資もAI需要には足りず

 TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、2026年1月14日に行った業績発表の中で「われわれは、AIアクセラレーター売上高の成長予測を上方修正し、2024〜2029年の5年間で年平均成長率(CAGR)が50%台半ばから後半に達すると見込んでいる」と述べた。また同社によると、2024年からの5年間の売上高の成長は、米ドル換算でCAGR 25%に達する見込みだという。同社のこれまでのCAGR達成目標は約20%だった。

 Goldman Sachsのグローバルリサーチ部門担当バイスプレジデントであるBruce Lu氏をはじめとする複数のアナリストは、TSMCが生産能力を強化しても、急増する需要には追い付けない可能性があると指摘する。米EE Timesが接触したアナリストは「TSMCの供給不足は、IntelやSamsung Electronics(以下、Samsung)といった競合企業に対し、AIチップ市場への参入機会を与えることになるかもしれない」と指摘する。

 Lu氏は「AIチップ生産能力は年間成長率15%強で伸びている」としながらも、AI/ブロックチェーン向けシステムによるトークン消費はそれ以上に増加しているという点を指摘した。「この数四半期のトークン消費は、1四半期当たり15倍に上り、依然としてギャップが存在している状況だ。だからElon Musk氏は、半導体不足について語っていたのだ」と述べる。

 Arete Researchの共同創設者であるBrett Simpson氏も「TSMCでは2024年以降、AI顧客向けの供給が制限されてきた。2026年も、さまざまな課題に直面する年になるだろう」と述べている。

「AIバブル」はTSMCも懸念

 米国の市場調査会社International Business StrategiesのCEOを務めるHandel Jones氏は、自身の予測を数値化し「TSMCは、過剰需要に慎重に対応している」と述べた。

 同氏はEE Timesの取材に対して「2026年の5nmプロセス以降のウエハー需要は、生産能力を25〜30%上回るとみられ、2027年も供給不足が続く可能性が高い。しかしTSMCにとって、ある程度の供給不足はメリットがあるといえる。将来的には減速が見込まれ、過剰な生産能力を保有することが問題になるためだ」と述べている。

 2025年のTSMCの売上高全体のうち、NVIDIAやAMD向けAIアクセラレーターが占める割合は、10%台後半に達したという。TSMCは「今後、AIアクセラレーターの売上高は急成長し、2024〜2029年の間にCAGRが50%台半ばから後半に達する見込みだ」と予測する。

 Wei氏は「将来を見据え、コンシューマーやエンタープライズ、ソブリンAIなどの分野全体でAIモデルの導入が拡大していることが分かる。このため計算能力の需要がさらに加速し、それが堅牢な需要を後押ししている」と述べる。

 一方でTSMCは、「AI需要は幻想かもしれない」という懸念を否定しなかった。

 米国の銀行持株会社であるJPMorgan Chaseでマネージングディレクターを務めるGokul Hariharan氏はTSMCの業績発表で「TSMCの2026年の設備投資は、生産能力のコミットメントを大幅に強化することになる。金融市場では現在、特に、バブルに近いような状態にあるのではないかという点について、間違いなく数多くの懸念が存在する」と述べた。

 TSMCのCEO Wei氏もこうした懸念を共有していて「私もその点については、非常に不安を感じている。当社は約520億〜560億米ドルの設備投資費を投入する。慎重に進めなければ、TSMCにとっては確実に大惨事となるだろう」と述べた。

 一方で同氏は需要増の兆候は本物であると確信しているようで、「私は全てのクラウドサービスプロバイダーと話をした中で、AIが彼らの事業を確実に支援しているという証拠を提示してもらった」と語った。

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