後輩:「今回の江端さんのコラムを読んでいて、江端さんが“中二病”であることが分かりました」
江端:「私が“中二病”?」
後輩:「はい。残念ながら、かなり重度の中二病です」
江端:「ずいぶん率直だな。どのあたりが、そう読めた?」
後輩:「MASって、結局のところ“街を自分で作りたい”という欲望が出発点ですよね。人を配置して、動かして、関係性を発生させて、世界を一つ丸ごと俯瞰(ふかん)したい、みたいな」
江端:「『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐の『はっはっ、 見ろ! 人がゴミのようだ!』って叫ぶ、あれ?」
後輩:「いや、それよりも、もっと幼稚。小学生がノートの端に街の地図を描いて、『ここで事件が起きる』とかやっているのと、本質的には同じです」
江端:「それを、博士論文にまで引き上げて、会社から研究原資も引き出している ――と ?」
後輩:「そこがまさに中二病です。幼稚な妄想を、数式とGISと計算資源で“本気の世界”にしてしまう」
江端:「なるほど。『事実ベース』として“ごっこ遊び”を、研究費と査読付き論文で”業務”または”研究”にしている、と」
後輩:「はい。しかもEBASimは、ただ街を作るだけじゃない。エージェントの中に、“人の不満”とか、“迷い”とか、“無駄な回り道”まで入れているじゃないですか」
江端:「まあ、現実の人間は合理的じゃないからな。そういえば、私の指導教官が『“MASというのは、しょせんは、大量のパチンコ玉を、ジオラマで作られた街に流しこむようなものだろう?”と言われたことがある』とか言っていた」
後輩:「そこです。江端さんは、それを『物理法則で動くパチンコ玉』じゃなくて、『自分の意思と判断を持つパチンコ玉』に置き換えた、という点が違う。合理的じゃない人間を、あえてプログラムに閉じ込める。その努力はどうあれ、その姿勢は完全に中二病です。『世界は俺の手の中にある!*』というやつです」
*)出典:シュタインズ・ゲート 第23話「境界面上のシュタインズゲート -Open The Steins Gate-」
江端:「……」
後輩:「結局、江端さんの業務や研究って、“MASで何ができるか”じゃなくて、“どこまで自分の妄想を現実として動かせるか”なんですよね」
江端:「……確かに。街を自由に作り、時間を操り、人を動かし、出会いを生成する。設定だけ聞けば、完全に中二病だ」
後輩:「でも、それでいいんです。中二病を隠さず、ちゃんとコードにして、論文にして、社会実装まで持っていく人は、あまりいませんから」
江端:「つまり、EBASimとは――」
後輩:「“江端さんの中二病を、社会的に通用する形で具現化する装置”です」
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