NTTは、半導体メモリ素子(DRAMセル)における熱とエントロピーを、電子1個単位で同時測定することに世界で初めて成功した。省エネルギー情報処理デバイスや次世代メモリ技術への応用が期待される。
NTTは2026年4月、半導体メモリ素子(DRAMセル)における熱とエントロピーを、電子1個単位で同時測定することに世界で初めて成功したと発表した。省エネルギー情報処理デバイスや次世代メモリ技術への応用が期待される。
情報処理では、「初期化操作」を行うことによって、ばらついた情報を一定の状態にそろえる。この時、エントロピー(情報のばらつき)は減少するものの、発熱(エネルギー消費)する。エネルギー消費の理論的最小値は「ランダウア限界」と呼ばれるが、実際のデバイスではこの限界を上回るエネルギーが消費されるという。この原因についてこれまでは、実験的に検証されていなかった。
そこでNTTは、DRAMセルの回路構造を対象に低速で初期化操作を行い、ランダウア限界に到達するかを検証した。ところが、測定したいエントロピーや熱の信号は極めて小さく雑音に埋もれやすい。このため室温動作の半導体素子では、これまで測定することができなかったという。
NTTは今回、独自のシリコンナノデバイスを用いた単電子検出技術を応用した。高性能検出器を用い、キャパシターに蓄えられた電荷量を単電子単位で測定。その情報から熱およびエントロピーを評価することとした。
具体的には、測定した電荷量からキャパシターの電位を算出し、リードの電位と組み合わせることで熱を測定した。さらに、DRAMセルの情報を決めるキャパシターの電荷量を単電子ごとに測定することで、エントロピーの計算が可能となった。
(a)デバイスの等価回路、(b)デバイスの電子顕微鏡写真、(c)検出器電流の測定例、(d)電子の移動ごとに生じる熱量、(e)熱量の算出方法を示した模式図、(f)得られた電子数確率分布[クリックで拡大] 出所:NTTNTTは、DRAMセルに対し注入する電荷量を変えながら、エントロピー減少率と熱量の関係性を調べた。この結果、エントロピーが減少するほど発生する熱量は増えた。その増加率も大きくなることが分かった。つまり、初期化エラー率が減少するほど熱量はランダウア限界からかけ離れていくことが分かった。
さらに詳細な解析を行った、この結果、DRAMセルは熱的に不安定な状態(非平衡状態)に情報を保持している。初期化操作を行う途中で熱的に安定な状態(平衡状態)へ移行する。この時に余分な熱が発生し、ランダウア限界を達成できないことが判明した。こうしたことから、省エネルギーメモリ素子を開発するには、熱的に安定な状態に情報を保持できる構造にする必要があるという。
1人で3台の重機を遠隔操作 IOWN APN活用で建設DXを推進
200GHz動作の受光素子、NTTが開発 次世代光通信の基盤に
「世界最高」品質の量子光、誤り耐性型量子コンピュータに貢献
遠隔GPUで低遅延AI映像解析、NTTが実証 IOWN APN活用
Rapidus、総額2676億円を調達 「日本経済に20兆円貢献」期待
ポスト5Gに期待! 「世界初」AlN系高周波トランジスタの動作に成功、NTTCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング