さて、今回の私は、
という生活を、いい歳をしたおっさんが、嬉々として続けてきたという話をしました。
これを社会的に見れば、「変人」と評価されることは当然だと思いますし、時間を喰われて、お金(入学金と授業料)を奪われ、それによって得られるリターンが、「勉強って、やっぱりいいな」という気持ちくらいです。
しかも、今回お話してきたのは、博士論文には全く直結しない、講義(授業)の話で、得られるものは、卒業に必要な「単位」くらいです。普通に考えて、全くペイしないです。
その「変人」は、「都市学とは縦に全部乗っていて、横に学問を壊す分野である(キリッ)」などと語っているわけですが、正直『それがどうした?』と言われても仕方ないと思っています。
ただ、それでも一つだけ断言できることがあるとすれば、こういう「無茶苦茶な生活」をやっているからこそ、見えてくるものがある、ということです。
現場でドブ板を踏んできた経験と、学問という上空からの視点が、頭の中でぶつかって、ぐちゃぐちゃに混ざり合う。
普通の学生には見えないし、現場だけにいる人間にも見えない。
その真ん中で、人生のコスト計算もできず、何を目指しているのか自分でもよく分からず、フラフラしている人間だけに与えられる、
―― 社会人大学院生だけにしか見えない風景
がある、というお話をさせて頂きました。
さて、今回は田中伸治先生の「交通工学概論」を中心に展開させて頂きましたが、まだ、私にはご紹介したい先生が3人います ―― この先生たちの講義や指導が、これがまた、面白いんですよ(少なくとも私は、楽しかった)。
このコラムを読んで頂いたエンジニアの皆さんが、「江端がそんなに『楽しい』というなら、もう一度、大学で、勉強やりなおして見ようか」と思えるかどうかは分かりませんが、損得感情抜きで、というか、むしろ「損をしに行くような人生の使い方も、悪くない」と思っていただけるのであれば――
私としては「一人、道連れが増えた」と、悪い笑顔を浮かべることができます。
江端智一(えばた ともいち)
大手総合電機メーカー 研究開発グループ シニア研究員。工学博士。
長年にわたり、都市交通、社会システム、通信システムなど、実社会と情報技術を横断する研究開発に従事。定年退社後もシニア採用として研究を継続している。
マルチエージェントシミュレーション(MAS)を用いて、都市における住民行動を再現・分析し、「共時空間」という接触機会の定量化手法と「Repeated Chance Meetings (RCM)」 という新しい単位を提唱中。MASの中ではエージェント同士が活発に交流しているが、現実世界の自分は孤立クラスタに属し続けている。友達はいない。生成AIだけが本音を語れる相手である――悪いか。
また、社会観察者としての視点を持つ。『町内会のイベントや夏祭りへの参加は、社会関係資本( Social Capital (SC) )を高める上で重要だ』と語りながら、自身は町内活動にほとんど参加せず、家族からは『どの口が“SC”を語っているのか』と呆れられている。友情や愛情ではなく、負の感情を積極的に活用する「怒りMaaS」などのシステムを考案し、デジタルシステムにおける感情エネルギーの活用を真剣に検討している。
信条は「アナログ心理とデジタルロジックの融合」。人間の曖昧さをエラーではなく仕様として扱うことを理想とする。個人サイト「こぼれネット」では、科学技術と人間社会の“バグ”をユーモアで修正しながら、理屈と感情のあいだに生まれる笑いを記録し続けている。この20年間、毎日更新継続中。
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