九州大学と村田製作所の研究グループは、大規模な温度センサーアレイから極めて少ない電力で、高速に信号を読み出すための新たな方式を開発した。より人間の皮膚に近い分解能で、温度や触覚を感じることができる電子皮膚やウェアラブルセンサーなどへの応用に期待する。
九州大学大学院システム情報科学研究院の矢嶋赳彬准教授と大学院システム情報科学府修士課程の萱野幸佑氏(現在はキオクシア)、村田製作所の高相圭氏らによる研究グループは2026年6月、大規模な温度センサーアレイから極めて少ない電力で高速に信号を読み出すための新たな方式を開発したと発表した。より人間の皮膚に近い分解能で、温度や触覚を感じることができる電子皮膚やウェアラブルセンサーなどへの応用に期待する。
ロボットやウェアラブル機器などでは、人間の皮膚と同じような性能や機能を持つ電子皮膚が注目されている。ところが、従来の電子皮膚システムは、センサーの出力がアナログ信号である。この信号を活用するにはデジタル信号に変換する回路が別途必要になる。このため、集積するセンサー数が増えると信号の精度が劣化し読み出し性能が低下することもあった。消費電力が増えるのも課題の1つである。
そこで今回は、ヒトの皮膚が温度を読み出すときの方法を参考にした。温度によって状態が急変する相移転材料をセンサーに用い、センサー出力を直接デジタル信号として読み出す「ダイレクトデジタル読み出し方式(DDRO)」を提案した。DDRO方式のセンサーアレイシステムを開発したのは「世界で初めて」という。
DDROのため、これまで課題とされてきた配線上におけるノイズの影響を構造的に抑制できる。動作モードは「抵抗値の違いを利用する方式」と、「充電速度の違いを利用する方式」の2種類を用意した。特に、充電速度の違いを利用する方式は、定常状態を待たずに判定できるため、高速化を実現した。
1024個のセンサーで構成されたフレキシブルセンサーシートと、180nmプロセスで試作した回路チップを用いて動作を検証したところ、消費エネルギーは1センサー当たり最小12.2ピコジュール、動作速度は1行当たり710ナノ秒を達成した。
今回開発した手法は、温度センサーに限らず、圧力や化学センサーなどにも応用することが可能だという。今後は、実環境での動作検証や長期信頼性の評価などを行い、早期実用化を目指す。
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