京都大学は、理化学研究所や九州大学と共同で、優れた半導体特性を有する有機分子「ルブレン」の構造を改良し、優れた性能と光に対する安定性を両立できる有機半導体材料「縮環ルブレン(FR)」を開発した。分子の曲がり方によって光学的/電気的性質が変化することも分かった。
京都大学は2026年4月、理化学研究所や九州大学と共同で、優れた半導体特性を有する有機分子「ルブレン」の構造を改良し、優れた性能と光に対する安定性を両立できる有機半導体材料「縮環ルブレン(FR)」を開発したと発表した。分子の曲がり方によって光学的/電気的性質が変化することも分かった。
有機半導体は、フレキシブルディスプレイや太陽電池の材料として期待されている。特にルブレンは、炭化水素分子の中では極めて高い電荷移動度を示す材料だ。一方で、光に当たると空気中の酸素と反応し、分解されやすいという性質がある。このため実用化が難しかったという。
こうした中、炭素原子が六角形に並んだ炭素骨格の中に、七角形(七員環)のような非六員環構造を組み込むと、分子は平面から「くら型」や「ねじれ型」に湾曲する。こうした構造の芳香族化合物は、その曲がり具合に応じて特異な性質を示すという。今回は、ルブレン骨格にこの手法を適用してFR分子を試作し、その安定性や機能を調べた。
FR分子の合成方法として今回は、還元的な条件を用いルブレンに七員環構造を導入する独自の合成経路を開発した。得られたFR分子を構造解析したところ、「くら型」と「ねじれ型」という、曲がり方の異なる2つの状態が存在することを確認できた。これらの分子は分離でき、熱によって互いに入れ替わる性質があることも分かった。
FR分子について、光照射に対する安定性を評価した。従来のルブレンが3.3時間で半分まで分解するという条件下で検証した。この結果、FR分子の半減期はくら型で約5日間、ねじれ型は約3週間以上となった。また、くら型FR分子を用いた単結晶トランジスタにおいて、5.33cm2/Vsという高い電荷移動度を実現した。ねじれ型FR分子の薄膜では、1つの光子から2つの励起子を生み出す現象「一重項励起子分裂」が、7.2ピコ秒という極めて高速に進行することを発見した。
今回の研究成果は、京都大学合成・生物化学専攻の久田雅人博士後期課程学生、清水大貴助教、松田建児教授、理化学研究所のKirill Bulgarevich博士、瀧宮和男チームリーダー、分子工学専攻の筒井祐介助教、関修平教授、九州大学の宮田潔志准教授らによるものである。
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