SamsungがSTT-RAMの開発を主導してきたGrandisを買収した。Samsungは、次世代メモリ技術の開発に大きく弾みがつくと期待を寄せる。
Samsung Electronicsは2011年8月2日、スピン注入磁化反転方式MRAM(STT-RAM:Spin Transfer Torque RAM)技術の開発企業であるGrandisを買収したと発表した。買収金額については明らかにしていない。
Grandisは今回の買収によって、Samsungの次世代メモリ技術を開発する研究開発部門に統合される。新しい半導体材料や半導体構造を長期的な商業的価値の視点で評価している部門である。Samsungは、Grandisが今後、同社のメモリ技術の開発に大きく貢献するとともに、Samsungの世界的な研究開発ネットワークにおいて重要な鍵を握るようになるとみている。
Grandisは、STT-RAMの開発を目的として2002年に設立された企業だ。STT-RAMは、DRAMの費用対効果と、SRAMの高速な読み書き性能、フラッシュメモリの不揮発性とを兼ね備えた次世代メモリだとされている。またSTT-RAMは、第1世代のMRAMの主な欠点を解決できるという。Grandisはこれまでに、Applied Materialsのベンチャー投資部門であるApplied Venturesや、Sevin Rosen Funds、Matrix Partners、Incubic、Concept Venturesなどのさまざまな投資企業から、合計で1500万米ドルの資金を調達している。
Grandisは2010年6月に、同社のSST-RAM技術によって、DRAMだけでなく、最終的にはNAND型フラッシュメモリも置き換えるという、野心的な新しい製品ロードマップを発表していた。
STT-RAMは第2世代のMRAM技術に位置付けられており、既存のMRAMが抱えていた幾つかの課題点を解決できるとされている。現在開発中のMRAM技術のほとんどは、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistance)素子に近接したワイヤーから生じる電流によって発生する磁界を使い、磁化を変化させてデータを記録する。Grandisは、「この方式は高速な動作を実現できるものの、消費電力が極めて大きい」と主張していた。
MRAMをはじめとするさまざまな次世代メモリ技術の開発メーカー各社は、長年にわたり、「既存のメモリを置き換える究極のメモリを開発する」と主張してきた。しかしこれまでのところ、こうした技術のいずれも、大々的な宣伝の割に大した成果を挙げていない。その一方で、DRAMやNANDフラッシュといった既存のメモリ技術では、着々と微細化が進んでいる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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