日本の半導体チップの輸出量が、予想を上回る速度で回復を遂げている。この結果、過剰在庫の放出や発注のキャンセルが相次ぎ、2011年8月の半導体チップの世界売上高は同年7月に比べて減少した。
ノルウェーの独立系投資銀行であるCarnegie Groupでアナリストを務めるBruce Diesen氏によると、「日本の半導体チップの輸出量は、2011年3月に発生した東日本大震災の後、予想を上回る速さで回復し始めた。これを受けて、半導体部品ディストリビュータが過剰在庫の放出を進めたことから、2011年8月における半導体チップの世界売上高は落ち込む結果になった」という。
世界半導体市場統計(WSTS:World Semiconductor Trade Statistics)が集計した半導体チップの世界売上高(3カ月平均値)は、2011年7月は249億米ドルだったが、同年8月には244億米ドルに減少した。
2002年以降、半導体チップの世界売上高(3カ月平均値)は、7月よりも8月の方が常に多かった。今回のように、8月に売上高が減少するというケースはこれまであまりみられなかったという。
Diesen氏はこれについて、顧客向け資料の中で、「世界経済が先行き不透明だったことから、半導体部品ディストリビュータが在庫調整を行ったことと、震災後の数カ月間で発注した分が過剰在庫となり、それを放出したことが原因だと考えられる」と説明している。同氏は、「東日本大震災の発生で日本の半導体の製造が一時的にストップしたことから、多くのメーカーが新たに部品を発注した。しかし、日本の半導体チップの輸出量が2011年7月に急激に増加し、予想を上回る速さで回復したことから、2011年8月には発注のキャンセルが相次いだ」と述べた。
Diesen氏は、AcerやHewlett-Packard(HP)の在庫量が多いことから、PC市場にも影響が及ぶとみている。ただし、低価格帯の携帯電話機や車載用機器などに向けた半導体市場は、堅調な成長を遂げていたようだ。
Diesen氏は以前に、2011年における世界半導体チップ市場の年平均成長率を4%と予測していたが、これについては修正しないようだ。ただし、2011年8月が予測どおりの数値で、2011年9月に回復傾向が見られない場合には、下方修正の必要があるとしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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