TransferJetコンソーシアムは、プロトコル変換層(Protocol Conversion Layer)に4つの新仕様を追加した。TransferJetに対応したモバイル端末の利用シーンを増やすことを狙った拡張規格だ。
近距離の高速無線通信技術「TransferJet」の業界団体であるTransferJetコンソーシアムは、著作権保護された商用コンテンツを扱えるようにする拡張規格を発表した。同コンソーシアムが規定するPHY層、接続層(Connection Layer)、プロトコル変換層(Protocol Conversion Layer)という3つの階層のうち、プロトコル変換層に4つの仕様を追加する。
既に3つの仕様は完成しており、残る1つは2012年第1四半期中に完成する予定(図1)。これらの拡張規格によって、IP(Internet Protocol)ベースのホームネットワークとTransferJetを接続したり、著作権保護された商用コンテンツを扱えるようになる。「TransferJetに対応するアプリケーションを増やし、利用シーンを広げることを狙った拡張規格だ」(同コンソーシアム)。
TransferJetコンソーシアムは、2009年に最初の規格を発行して以降、規格の拡張に取り組んできた。TransferJet規格の特徴は、データ伝送速度が最大560Mビット/秒、実効速度が375Mビット/秒と高いこと。接続距離は数cmと短く、機器間をタッチさせて画像や映像といった大容量コンテンツをやりとりすることを想定している(関連記事)。
TransferJet規格のプロトコル変換層に追加済みの3つの仕様は、接続層のデータを(1)シリアルデータ、(2)SD over SCSIデータ、(3)PTP/MTPデータに変換するもの。これまでは、OBEX(OBject EXchange)またはSCSIのみに対応していた。
例えば、SD over SCSIデータに変換する仕様によって、SDカードにTransferJet通信機能を実装することが可能になった。CPRM(Content Protection for Recordable Media)対応のSDカードを使って著作権保護を維持したデータを転送することができる。PTP/MTPデータは、写真データの転送に利用されている。MTPはPTPの拡張版で、著作権保護されたコンテンツをPCに転送するときなどに使われる。
以上の3つの仕様は既に完成しており、製品に実装できる段階にある。2012年第1四半期中の完成を目指して策定中の4つ目の仕様は、接続層のデータをIPパケットとして取り扱うためのもの。これが完成すれば、TransferJetを介して、著作権保護規格「DTCP(Digital Transmission Content Protection)-IP」で管理された地上デジタル放送コンテンツをDLNAなどのホームネットワークに送信できることになる。
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