2012年のCESでは、無線通信機能を搭載した家電が数多く出展された。これまで単独で動作していたさまざまな機器が、今後はどんどんネットワークにつながるようになる。Broadcomはそうした傾向を踏まえ、機器メーカーが無線通信機能を製品に容易に組み込める技術を紹介した。
米ネバダ州ラスベガスで開催された「2012 International CES(Consumer Electronics Show)」(2012年1月10〜13日)において、IEEE 802.11acに対応する無線LANチップをいち早く発表し、注目を集めたBroadcomが、もう1つ重要視している分野がInternet of Things、いわゆる“モノのインターネット”である。
モノのインターネットは、コンセプトこそ目新しくはないものの、それを実用化する技術が追い付いてきたのは、スマートグリッドやスマートエネルギーが注目されるようになった、ここ数年だといわれている。実際、今回のCESでも、歩数計やヘルスメーター、モバイル端末などの小型機器、そして洗濯機などの大型家電に無線通信機能を組み込み、それらを相互に接続することで、より便利な生活を実現しようとするコンセプトのデモンストレーションが随所で見られた。
Broadcomは、このように無線通信機能を実装したいと考えている民生機器メーカーに対して、組み込みプロセッサとWi-Fiチップを搭載したモジュールと、API(Application Program Interface)、ソフトウェアで構成されるパッケージ「WICED(ウィキッド)」を提供している。モジュールのWi-Fiチップは、IEEE 802.11a/b/g/nに対応する。WICEDを実装するだけで、家電や携帯機器に無線通信機能を容易に組み込めるという。洗濯機やエアコン、電子レンジなどにWICEDを実装してスマートエネルギーシステムを構築したり、デジタルカメラなどの携帯機器にWICEDを実装して写真や動画などのファイルを無線で共有する機能を組み込んだりといったことが可能になる。
Broadcomのモバイル&ワイヤレス部門でシニアバイスプレジデントを務めるMichael Hurlston氏は、「今後、本格的にモノのインターネット時代に突入すれば、体重計などのヘルスケア製品から家電まで、あらゆるものに通信機能が必要になる。当社の役目は、Wi-Fi機能をそのような民生機器に容易に実装できる手段を提供し続けることだ」と述べる(図1)。
Broadcomは、日本を「モノのインターネット市場が大きく成長する地域」と位置付けている。Hurlston氏は、「日本では、当社は既にWi-Fi機能を搭載したプリンタの分野において成功を収めているが、今後は、ヘルスケア分野や車載分野なども狙っていく。こうした分野以外でも、大手家電メーカーやゲーム機器メーカーが数多く存在する日本は、当社にとって非常に重要な市場である」と語った。
ブロードコム・ジャパンのカントリーマネージャーを務める高市良治氏は、「日本では、プリンタの他、デジタルカメラにもWi-Fi機能が搭載され始めており、多くの民生機器メーカーが無線通信機能の搭載に興味を示している。こうしたメーカーに、WICEDの技術で貢献していきたい」と強調した。
この他、Broadcomは、「Wi-Fi Direct」に対応する機器を用いたデモンストレーションも披露した(図2)。Wi-Fi Directとは、アクセスポイントが無くても、テレビや携帯機器などの機器間をWi-Fi通信で直接接続できる規格である。「機器同士を接続するという点で、Wi-Fi Directも必要不可欠なインフラになりつつある」(高市氏)。
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