ルネサスは、欧州や中国の市況悪化とタイの洪水により、目標としていた2011年度下期の黒字化が困難な情勢にある。2012年度の業績回復は、「選択と集中」をどこまで進められるかが鍵になりそうだ。
ルネサス エレクトロニクスは2012年1月31日、東京都内で会見を開き、2012年3月期(2011年度)の業績予想を説明した。
同社は、2011年10月31日に発表した業績予想(関連記事1)において、東日本大震災の影響を脱した第2四半期からさらに業績が回復すると見込んで下期の黒字化を予想していた。しかし、欧州や中国の市況悪化が急速に進んでいる上に、タイ洪水の影響によって下期の売上高が約200億円減少するため業績予想を下方修正することとなった。今回発表した下期の半導体売上高見込みは前回予想比18%減の3858億円。東日本大震災の影響が直撃した上期の売上高実績である4022億円を下回っている。このため、「下期の黒字化は困難な情勢」(同社社長の赤尾泰氏)にある。
なお、2011年度の通期見通しは、半導体売上高が前年度比23%減の7880億円、営業損益は同625億円悪化して480億円の損失、経常損益は同550億円悪化して540億円の損失、純損益は同580億円改善して570億円の損失となっている。
また、同日発表した2011年度第3四半期の決算は以下の通り。半導体売上高は前四半期比9%減の1980億円。損益面では、原価改善や研究開発費の圧縮などの効果により、営業損益は同61億円改善して40億円の損失、経常損益は同95億円改善して36億円の損失、純損益は同64億円改善して24億円の損失に止めた。
第3四半期の半導体売上高の主な内訳は、マイコンが前四半期比1%増の886億円、アナログ&パワー半導体(A&P)が同19%減の545億円、SoC(System on Chip)が同15%減の534億円となった。マイコンでは、汎用マイコンが同10%減少したものの、車載マイコンがタイ洪水による需要減を国内自動車メーカーの増産効果が上回り同10%以上伸びた。A&PとSoCも、車載分野の売上高が前四半期比で増加したものの、民生用機器やPC関連の大幅な需要減をカバーできなかった。この結果、半導体売上高に占める車載分野の比率は、2010年度当初の25%から36%にまで高まっている。赤尾氏は、「車載分野もタイ洪水の影響を受けて想定より需要が減少したものの、東日本大震災からの生産回復を目指す日系自動車メーカーの需要増がけん引した。一方、民生用機器やPC、産業用機器は、欧州の財政不安と中国の金融引き締めを背景に市況悪化が想定以上に進み、大幅に売上高が減少することとなった」と説明する。
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