それでは悪化している市況の回復時期はいつごろになるのだろうか。赤尾氏は、「今年の1〜2月にかけて底打ちするだろう。ただし、しばらくは横ばいが続き、上向きになるのは春ごろではないか」と見ている。
2012年度は、市況回復に加えて、東日本大震災の復興、タイ洪水からの反動、電力のスマート化、ロンドンオリンピックや米大統領選といった需要が増加する要因がある。ルネサスは、これらの需要を捉えるための構造改革として、製品の「選択と集中」をさらに進める方針だ。
「選択」のための施策としては、採算が悪化していた大型ディスプレイ駆動IC事業(年間売上高約200億円)からの撤退(関連記事2)方針を固めた。またSoC事業については、テレビなどの民生用機器向けやフィーチャフォン向けについて既に絞り込みを始めているという。
一方の「集中」では、マイコンとパワー半導体の製品数を増やす。具体的には、2010〜2012年度の3年間で、中国市場向けマイコンを1000製品、パワー半導体を高耐圧品を中心に1000製品投入する。2012年3月末までに、それぞれ700製品の投入を完了する予定だ。
また、Nokiaから買収したLTEモデム事業が順調な成果を挙げていることを強調した。搭載製品の第1弾となったのは、1月27日に発売された京セラのソフトバンクモバイル向けAndroidスマートフォン『HONEY BEE 101K』である。HONEY BEE 101Kには、LTE対応モデムを集積したSoC『MP5225』(関連記事3)が採用されている。また、「国内3社と海外5社が、当社のLTEモデムを用いたスマートフォンや通信カードの設計を始めている。これらの製品は、2012年度中に市場投入されるだろう」(赤尾氏)という。
NTTドコモなど6社が設立を検討しているLTE向けを中心としたベースバンドICの合弁企業(関連記事4)については、「当面は、当社のLTEモデム事業への大きな影響はないと見ている。また、従来からのNTTドコモとの協力関係は維持する」(同氏)方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.