2011年に、高性能と低消費電力のアプリケーション処理用プロセッサコアを組み合わせる「big.LITTLE処理」を発表したARM。新しいグラフィックスコア/ハイエンドプロセッサコアの開発コード名が神話の巨人と神の組み合わせだったことから、これらの分野でもbig.LITTLE処理を実現するかどうかに注目が集まっている。
ARMは、2012年の開発ロードマップを発表した。2012年に開発を手掛けるチップは、高性能プロセッサと低消費電力マイコン、グラフィックスコアで、ARMはそれらの開発コード名を明らかにしたが、その他の詳細についてはほとんど分かっていない。
次世代グラフィックスコアの開発コード名は、「Skrymir(スクリューミル)」と「Tyr(ティール)」だという。Skrymirは北欧神話に登場する巨人である。Tyrは北欧神話に登場する軍神で、英語のTuesday(火曜日)の語源になったと言われている。ARMは、2011年第4四半期の決算発表に集まったアナリストらに対し、これら2つのコアを1枚のスライドで紹介した。
こうしたことから、ARMはSkrymirとTyrを使って、グラフィックスコアの分野でも「big.LITTLE処理」のような処理を実現する計画ではないかとみられている。
ARMのアプリケーション用プロセッサコアの分野では、このbig.LITTLE処理が既に実現されている。具体的には、高性能な「Cortex-A15」と低消費電力の「Cortex-A7」を組み合わせて、これらのコアをタスクの負荷に合わせて切り替えるというものである(関連記事)。負荷が軽い場合はCortex-A7で動作し、その間Cortex-A15はオフ状態になっている。負荷が増大してクロック周波数が上昇すると、プロセッサコアがCortex-A7からCortex-A15に切り替わる。
ARMでCEO(最高経営責任者)を務めるWarren East氏は、SkrymirとTyrが高性能かつ高効率のグラフィックスコアであると説明しているが、その他の詳細ついては2012年後半に発表するとしている。同氏は、「SkrymirとTyrは、モバイルコンピューティング分野や家電分野など、幅広いアプリケーションに対応する。当社は既に、両コアの開発において主要なパートナー企業と契約を結んでいる」と述べる。SkrymirとTyrという開発コード名が、どちらも北欧の神話に関連することから、「big.LITTLE処理と関係があるのか」という質問に対し、East氏は直接的な回答は述べなかったが、「big.LITTLE処理をグラフィックスコアにも適用する計画はある」とした。
ARMは、次世代ハイエンドプロセッサコアの開発コード名にも、ギリシャ神話の巨人「Atlas(アトラス)」と神「Apollo(アポロ)」という古典的な名称を選んだ。AtlasとApolloは、64ビットコンピューティングに対応した次世代アーキテクチャ「ARMv8」を実装する予定だ。これらのチップは、20nmプロセス技術の適用を想定して設計されており、スマートフォンからサーバまで幅広いアプリケーションを想定している。ARMは、AtlasとApolloについても、主要パートナー企業との契約を結んでいるという。
AtlasとApolloがギリシャ神話に登場する巨人と神であることから、Atlasはbig.LITTLE処理の“big”に、Apoloは“LITTLE”に相当すると推測される。East氏は、「AtlasとApolloは2014年に量産を開始する予定だ。その頃には、20nmプロセス技術が実用化されているだろう」と話す。
2012年のロードマップで5番目に紹介されていたチップには、神や巨人の名前は付けられていない。同チップの開発コード名は「Flycatcher」で、「Cortex-M」シリーズの中で最も小型かつ最も低消費電力のプロセッサコアになるという。ARMは、Flycatcherの開発について、主要パートナー企業1社と契約を結んでいる。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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