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「原子時計の精度をあなたの腕に」、セイコーが業界初のGPS腕時計を開発センシング技術 GPS測位

同社従来比1/5と消費電力を大幅に削減したGPSモジュールを新たに開発することで、ソーラー充電式の腕時計にGPS測位機能を載せることに成功した。全世界の39のタイムゾーンに対応するとともに、GPS衛星の原子時計の時刻情報を基に腕時計の時刻を自動で修正する機能を搭載した。

» 2012年03月05日 16時53分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 セイコーホールディングスとセイコーウオッチ、セイコーエプソンの3社は、超低消費電力のGPSモジュールを搭載したソーラー充電式GPS腕時計を開発した。

 特徴は主に2つ。1つは、利用者が時差やタイムゾーンを気にせずとも、地球上のどこにいても今いる場所の時刻を表示できること。もう1つは、GPS衛星に搭載された誤差が10万年に1秒という高精度の原子時計の情報を使うことで正確な時刻表示を実現したことである。「このような腕時計は業界初」(セイコーウオッチ)。「セイコー アストロン」という名称で、2012年9月下旬に販売を開始する。

図 GPSモジュールを搭載した腕時計「セイコー アストロン」 全世界の39のタイムゾーンに対応するとともに、GPS衛星からの正確な時刻情報を基に自動で時刻を修正する機能を搭載した。

消費電力が業界最小のGPSモジュールを自社開発

 今やGPS衛星を使った測位機能は、カーナビや簡易型カーナビ機器(PND)のみならず、携帯電話機やスマートフォンといったさまざまな電子機器に搭載されている(関連記事つながる広がる位置情報、あなたの機器に測位技術が載る )。ただこれまで、GPS測位に要する消費電力が大きかったため、ボタン電池や太陽電池が動力源の腕時計に載せるのは難しかった。

 今回セイコーエプソンが、同社従来品に比べて消費電力を1/5に削減したGPSモジュールを新たに開発したことで、太陽電池を動力源にした腕時計にも実装できるようになったという。「当社のGPSモジュールはこれまでも消費電力の低さを売りにしていたが、そこからさらに消費電力を1/5に下げた。業界で最も消費電力の小さなGPSモジュールだ」(セイコーエプソン)と主張する。GPS信号を受信する高周波(RF)部とベースバンド処理部それぞれの消費電力を抑えるとともに、受信感度を維持しつつ小型化したGPSアンテナを開発することで実現した。

 GPSモジュールを搭載した腕時計は、基本的にはクォーツ方式で稼働している。利用者が望むタイミングまたは自動で、GPS衛星からの正確な時刻情報を受信し、腕時計の時刻表示を修正する。また、GPS衛星を使って利用者の位置を測位することで、全世界で39に分かれているタイムゾーンのどこにいるかを特定する。このタイムゾーン情報と、GPS衛星からの時刻情報をひも付けることで、現在いる場所の正確な時刻を表示する仕組みだ。

図 セイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏(左)と、セイコーホールディングス/セイコーウオッチ代表取締役社長の服部真二氏(右) 碓井氏は、「ソーラー充電式GPS腕時計をこれからの腕時計のデファクトとして発展させていきたい」と語った。

 ただ、GPS衛星を使った測位技術には多くの特徴がある一方で、屋内や地下ではGPS信号を受信するのが難しいという点や、位置情報を演算するのに時間がかかるケースがあるといった弱点がある。例えば、海外旅行で空港を降りた後、今回開発されたGPS腕時計で現地の時刻を確認しようとしても、空港施設の内部にいるとGPS衛星で位置を測位し、現地のタイムゾーンを特定するのは難しい。この点については、「建物内部でも窓の近くであれば、位置を測位したり、時刻情報を受信したりできる。窓から離れた場所や地下にいると原理的にGPS信号の受信は難しいが、この点は利用者に情報として伝えたい」(セイコーウオッチ)と説明した。位置を測位し、タイムゾーンを修正するのに要する時間は最短30秒、同一のタイムゾーン内での時刻修正は最短6秒だという。

 製品説明会に登壇したセイコーホールディングス/セイコーウオッチ代表取締役社長の服部真二氏は、「時計の歴史を振り返ると、第1の時計革命が1969年の登場したクォーツ時計技術の登場だった。クォーツ時計に続く第2の時計革命が、地球のどこにいてもその場所の時刻を自動かつ正確に表示できるGPS腕時計の実用化だ」と語った。

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