ルネサス エレクトロニクスの2011年度決算では、東日本大震災、タイの洪水、欧州と中国を中心とする市況悪化などにより半導体売上高が前年度比23%減の7860億円に落ち込んだ。同社はこの厳しい結果を受け、売り上げ規模の拡大よりも利益の確保を重視した新規の事業計画を策定している。
ルネサス エレクトロニクスは2012年5月9日、東京都内で会見を開き、2011年度(2012年3月期)の通期決算を発表した。
2011年度通期の半導体売上高は、東日本大震災、タイの洪水、欧州と中国を中心とする市況悪化などにより前年度比23%減の7860億円となった。2329億円もの売上高の減少により損益面も大幅に落ち込んだ。営業損益は同713億円悪化して568億円の損失、経常損益は同622億円悪化して612億円の損失となった。純損益については、前年度の2010年度末に東日本大震災関連の特別損失を計上していたこともあり、同524億円改善して626億円の損失となった。
事業別の売上高は、マイコンが前年度比12%減の3363億円、アナログ&パワー半導体が同23%減の2438億円、SoC(System on Chip)が同35.5%減の2012億円となっている。マイコン売上高の50%を占める汎用マイコンは、震災、タイの洪水、市況悪化の影響により、売上高が前年度比20%減少した。一方、残りの50%を占める車載マイコンは、震災の影響はあったものの、年度後半に国内自動車メーカーの増産によって復調し、前年度並みの売上高を確保した。アナログ&パワー半導体も、車載向けの売上高は前年度比で増加したものの、PCや産業用機器向けの売上高は前年度比で20%以上減少した。SoCは、前年度を上回った車載情報機器向けを除いて、既存の携帯電話機(フィーチャフォン)の需要が大幅に落ち込んだモバイル機器向けが前年度比で半減、テレビ向けなどを縮小したPCや民生用機器向けが前年度比30%減などとなっている。
また、通常は通期決算と併せて発表する次年度(今回であれば2012年度)の業績見通しは開示されなかった。同社社長の赤尾泰氏は、「車載向けを除いて足元の半導体市況が不透明であることに加えて、景気に左右されない製品群を中核とする事業計画を策定中であるため、業績見通しの開示を見送った。新規の事業計画は、売り上げ規模の拡大よりも、利益の確保を重視したものになるだろう。2012年度第1四半期の決算発表までには、今後の事業計画や業績見通しを明らかにしたい」と述べている。
Nokiaから買収したLTEモデム事業については、採用社数(開発中を含む)が、2011年度第3四半期決算発表時の8社(関連記事)から14社に増えたことを明らかにした。「モデム機能だけを備えるICは、NVIDIAやTexas Instrumentsのアプリケーションプロセッサと組み合わせて、高機能のスマートフォンやタブレットPC向けに展開する。アプリケーションプロセッサとモデム機能を集積したICは、当社初の28nm製品として、2012年10〜12月期にボリュームゾーンのスマートフォン向けに量産を始める予定だ」(赤尾氏)という。
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