SiCのバンドギャップ(3.26eV)は、Si(1.12eV)の約3倍です。バンドギャップの大きな半導体のpn接合では、順方向電圧が高くなります。つまり、バンドギャップが大きいことは例えば青色発光ダイオードなどには適していますが、そのままでは電圧ドロップが小さいほど望ましい大電流のパワーデバイスには向かないため、さまざまな工夫が必要になります。
図5を見る限り、三菱電機と東芝にはSiC IGBTへの取り組み意欲があると考えられます。
図6からは、エアコンや太陽電池用パワーコンディショナーを手掛ける企業が次世代コンバータとして、SiCコンバータに取り組んでいることが分かります。
2010年のデンソーの特許出願は、2012年5月公表の小型SiCインバータにつながるものと考えられます(関連記事:デンソーが小型SiCインバータを披露、出力密度は世界最高水準の60kW/l)。
三菱電機は2012年1月から地下鉄車両向けSiCインバータの試験走行を開始すると2011年10月に発表*8)しており、このことは特許出願動向にも反映されています。
東芝は2012年中に鉄道車両向けSiCインバータの試験走行を開始すると発表*9)しており、今後の特許公開件数に反映されるものと考えられます。
*8) 三菱電機の発表資料:SiC適用鉄道車両用インバーターの製品化
*9) 東芝の発表資料:従来比約60%の体積削減を実現したSiC適用鉄道車両向けインバータの開発
図7から、三菱電機と東芝はSiCモジュールに熱心に取り組んでおり、事業化意欲が高いと考えられます。
例えば、三菱電機は2012年7月に、SiCパワー半導体モジュールのサンプル(SiC SBDやSiC FET搭載の家電製品や産業機器向け5品種)の提供を2013年1月までに順次開始することを発表*10)しました。SiCを用いることで、インバータを使用した家電製品や産業機器などの高効率化と小型・軽量化に貢献するとしています。
*10) 三菱電機の発表資料:「SiCパワー半導体モジュール」サンプル提供開始のお知らせ
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