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会議は、非リアルタイム系の“読み書き戦”に持ち込む「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(15)(2/6 ページ)

» 2013年03月25日 08時00分 公開
[江端智一,EE Times Japan]

 この「未来完了戦略」とは何か。

 一言で申し上げると、本来ミーティングで実施すべき事項を、ミーティング直前までに「完了」してしまう戦略です。ミーティングにおいて「もう何もすることがない」という状態にまで持ち込むことを目的とするものです。

 本来の戦争(=通常のミーティング)においては、宣戦布告の日(=ミーティング当日)に、軍隊が持ち得る能力を最大限に発揮するための徹底的な準備を行います。これが「兵站」の目的です。

 しかし、私たち「英語に愛されないエンジニア」の戦い方では、そのパラダイムを逆転させます。つまり、「兵站」そのものを「戦闘行為」と考え、宣戦布告に当たるミーティング当日を、戦闘完了時と考えます。ダイナミックなタイムシフト、つまり「大規模な前倒し」を行うのです。

「未来完了戦略」では、“大規模な前倒し”を行う(クリックで拡大)

“読み書き”戦に持ち込む

 「英語に愛されないエンジニア」である私たちは、英語に関することであれば、何もかも愛されていないことは明白です。しかし、その中でも、突出して「愛されていない分野」を挙げろと言われれば、「プレゼンテーション」と「会話」であることに疑いはないでしょう。

 この2つに「なぜ愛されていないのか」は明白です。リアルタイム性が要求されるからです。いずれも、応答時間を自分自身で自由にコントロールできない。相手から何かの質問をされた場合、どんなに遅くても3秒以内に対応しなければならないでしょう。

Step.1)相手(発信元)の英語を聞く
Step.2)その内容を日本語に変換する。しかも、この段階で既に情報のかなりの部分をロストしている
Step.3)その不完全な情報から、発信元の情報の復元を試みる
Step.4)試みた上で、間違っているであろう回答を準備する
Step.5)その解答を、これまた不完全な英文フレーズの音声信号に変換する

という処理を、遅くとも3秒以内に行う必要があるのです。

 これは相当に厳しい制御です。

 しかし、この応答時間が「3秒」ではなく、「3時間」許されたとしたらどうでしょうか。しかも、その3時間はあなたの裁量で自由に使えるものとします。辞書やインターネットで調べてもいいし、他人に聞いてもいい。「それなら、いける」とは思いませんか。

 我が国の英語教育が、会話力よりも読み書きに重きが置かれている、という話が本当かどうかは分かりませんが、時間をかければある程度は何とかなる英文の読み書き能力と比較して、会話力がビジネスに足りるレベルにないことは事実です。その原因を探ってみたところで、あまり意味がありません。どのような理由や状況であれ、われわれは「英語に愛されないエンジニア」として完成してしまっているのです。

 ここは逆転の発想をすべきです。

 私たちは「英会話が苦手」なのではなく、「英語の読み書きが得意」なのである、とパラダイムの方を変えてしまうのです。とすれば、取るべき道は一つです。私たちは、私たちの得意分野で敵と戦えばいいのです。

 まとめますと「未来完了戦略」とは、

  1. 出張命令発令からミーティング直前までの期間の全てを、「実質的な戦闘」を行う期間と位置付けた上で、
  2. その実質的な戦闘期間において使える武器を「読み書き」に関わるものに限定し、
  3. その期間を可能な限り長引かせることで状況を有利に展開し、
  4. 当日のミーティグの意義を骨抜きにし、単なる確認、または儀式の場にしてしまう

戦略であると理解していただければ結構です。

「出張命令」から「ミーティング当日」までが、戦闘期間になる

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