富士通は、半導体子会社・富士通セミコンダクターの主力事業の1つマイコン/アナログ半導体事業をSpansionに売却すると発表した。既に富士通セミコンのもう1つの主力事業であるシステムLSI事業をパナソニックなどと統合する方針を打ち出し、脱半導体を色濃くしているが、富士通社長は「今後も富士通として半導体に深く関与していく」とコメントした。
富士通は2013年4月30日、半導体子会社である富士通セミコンダクター(富士通セミコン)のマイコン/アナログ半導体事業の設計開発機能と海外販売機能を、フラッシュメモリー事業を展開するSpansionに売却すると発表した。富士通は同年2月に富士通セミコンのシステムLSI事業をパナソニックのシステムLSI事業と統合することで基本合意(関連記事:「半導体事業再編は苦渋の決断」、富士通セミコンの従業員数は2000人以下へ)しており、同日会見した富士通社長の山本正已氏は「半導体事業の構造改革は5合目まできた。富士通としての体質改善の道筋にめどが付いた」と語った。
Spansionに売却するのは、富士通セミコンで展開するマイコン/アナログ半導体事業の設計開発部門と海外拠点のマイコン/アナログ半導体に関わる販売機能。同設計開発部門には、富士通VLSIと富士通マイクロソリューションズという2つの富士通セミコン子会社の関連部署も含む。売却額は、事業譲渡額1億1000万米ドル(約109億円)に、製品在庫などに関連する棚卸資産6500万米ドル(約64億円)を加えた計1億7500万米ドル(約173億円)。事業譲渡に伴う従業員の転籍は約1000人としている。
一方で、マイコン/アナログ半導体の前工程製造拠点である会津若松地区の2工場は富士通セミコングループに残し、Spansionからの委託の形で製造を続ける。製造機能を残したことに対し山本氏は「当面は、会津若松地区の工場を持ち続ける。同工場は減価償却を終えており、効率が良い。爆発的に利益が出ることはないが、事業は継続できる」と説明した。同時に、富士通セミコンの販売子会社である富士通エレクトロニクスは、Spansionの国内販売代理店となるため、結果的にはマイコン/アナログ半導体の国内販売機能も富士通グループ内に残ることになる。
富士通は同年2月に、マイコン/アナログ半導体と並ぶ富士通セミコンの主力事業であるシステムLSI事業について、設計開発機能をパナソニックの同事業と統合し、システムLSIを製造する三重工場300mmウエハー対応工場をTSMCへ売却する構造改革案を発表。当初はこれら構造改革について2012年度内にパナソニックなどと最終合意することを目指していた。システムLSI事業の改革の進捗(しんちょく)状況について山本氏は「遅れている印象を与えるかもしれないが、実際にはそうではない。半導体は確実な利益モデルを作る必要がある。現在、仮に(円高だった)2012年の為替水準でも利益を出せるモデルを作るための議論を進めている。2013年度上期(2013年4〜9月)中に何とかしたい」と交渉を続けていることを示唆した。
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