富士通グループの半導体事業会社である富士通セミコンの主力2事業で大幅な改革方針を打ち出したことで半世紀以上の歴史を持つ「富士通半導体」の消滅も懸念される。しかし、山本氏は「半導体はなくならない。逆にますます重要になる。今後も富士通として半導体に深く関与していく。(パナソニックなどとの交渉を続けている)システムLSI事業の新統合会社には何らかの形で関与を続けていく」と「富士通半導体」の継続に意欲を示した。
なお、再編の対象となったマイコン/アナログ半導体とシステムLSI以外に富士通セミコンが展開している、FRAM(強誘電体メモリ)などを手掛けるシステムメモリ事業や、GaNデバイスを展開するパワーデバイス事業も継続する。
富士通の半導体関連事業の業績は、2012年度実績で売上高2896億円(前年比11%減)で営業損益は138億円の赤字。2013年度の半導体関連事業の業績予想(交渉中のシステムLSI事業の構造改革効果は含まない)は、スマートフォン向けシステムLSIの需要増などを見込み、Spansionに売却するマイコン/アナログ半導体の海外販売ビジネスの減収分(約100億円)をカバーし2012年度比10%増収となる売上高3200億円を見込む。営業損益も、Spansionへの事業売却や国内外2400人規模の早期優遇退職制度実施(国内では2013年6月末)といった構造改革効果130億円を見込み、通期で80億円の黒字を計画している。
富士通のマイコン/アナログ半導体事業を買収するSpansionは2003年にAMDと富士通のメモリ事業部門が統合して誕生したNOR型フラッシュメモリの大手メーカー。2009年に、NOR型フラッシュ市場の成長鈍化やリーマンショックの影響などにより、米国連邦倒産法第11章(チャプター11)を申請し経営破綻。その後、工場の売却や、組み込み向けメモリに集中するなどの経営再建に取り組み、2010年5月に同法の適用から脱却するなど経営再建を果たした。福島県会津若松市にあった2工場は、2010年にTexas Instrumentsが買収している。Spansionの2012年度業績は、売上高9億1593万米ドル、営業利益6284万ドルだった。
今回の事業買収についてSpansionの社長兼CEOのJohn Kispert氏は、「この買収は、当社にとって売上規模の拡大をもたらすとともに、最先端の組み込みフラッシュ技術を必要とするSoCソリューション市場での事業拡大を目指す当社の戦略に沿ったもの。当社は今回の買収で、優れた人材・知的財産とともにマイコン・アナログ製品を獲得することにより、車載、産業、民生市場における組み込み型システムの要求を一貫してサポートすることが可能となり、顧客基盤の拡大が可能になる。当社は、富士通セミコンダクターと十年以上にわたり、戦略的な関係を築いており、多くの顧客をともにサポートしてきた。全ての従業員および顧客のため、スムーズな事業の移管に取り組んでいく」とコメントしている。
なお、5月1日午前10時(日本時間)に行った今回の買収に関するSpansionの会見の模様はこちら。
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