その“ただ一人”こそ、われわれエンジニアです。
海外出張というのは、われわれエンジニアだけにはメリットがないのです。
もちろん、あなたの努力は、どの会社でも正当に評価されると思います。上記の表に出てくる、こんなにも多くの人たちにメリットを与えたのですから。それに、会社自体の評価も上がると思います。これは、長期視点ではエンジニアのメリットになる、とも言えます。
「成功だけが成功ではない。われわれは、Good Loser(良き敗者)となることで、次の成功につなげることができるのだ」と、多くのエライ人たちが、われわれに諄々(じゅんじゅん)と説くでしょう。
ですが、あなたはそれで納得できますか?
私たち「英語に愛されないエンジニア」が、ここまでやってきた闘いの日々が、「広告塔」のスピーカーであり、「アイドル」のプロモーションビデオにすぎないということを、自分が考え出して、苦労して改良して、提案したものが、製品やサービスのひとかけらにもならないということを、あなたは心底悔しいとは思いませんか?
――私は、悔しいと思いました。
事業化断念の判断が、客観的に見て妥当あり、本当に仕方ないことだと頭で分かっていたとしても、心では納得できませんでしたし、涙が出そうになるくらい腹が立ちました。
私が、この連載の第1回で申し上げたこと、
海外での仕事を命じられてしまった、ゆくゆくは命じられるであろう「あなた」が、
という事実が、今回(第18回)に至るまで、まったく揺るぎなく一貫していることをご理解いただけるものと思います。
そして、残酷なことではありますが、海外における仕事の多くは、このような「怒り」と「悲しみ」の2つから作られている、といっても過言ではないように思えます。
何のために、私たち「英語に愛されないエンジニア」は、海外に送られ闘わされ続けるのか。このような挫折の連続の中で、心の折れないエンジニアがいるとしたら、それは人間ではないと思います。
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