セッション13(エネルギー効率の高いRFシステム)では、消費電力の極めて低い無線通信回路が続出する。注目講演は、消費電力が非常に小さな5.8GHz帯のRF給電型トランシーバである。東京工業大学が発表する(講演番号13.8)。113μWと低い消費電力で、2.5Mビット/秒の伝送速度を32値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)によって実現した。ワイヤレスセンサーネットワークのセンサーノードへの応用を想定している。
この他セッション13では、消費電力を低減したBluetooth規格である「Bluetooth Low Energy(BLE)」に準拠した送受信器の講演が相次ぐ。受信回路の消費電力が3.7mW、送信回路の消費電力が4.4mWと低く、BLEの物理層・データリンク層・MAC層を集積したSoC(System on Chip)をオランダのIMECとEindhoven University of Technology、ルネサス エレクトロニクスの共同研究チームが報告する(講演番号13.2)。整合回路と送信/受信切り換えスイッチを内蔵したBLEトランシーバをオランダのDialog Semiconductorが発表する(講演番号13.3)。消費電力が6.3mWと低く、整合回路を内蔵したBLEトランシーバをルネサス エレクトロニクスとルネサスシステムデザインの共同開発チームが報告する(講演番号13.4)。消費電力が0.6mWのBLE受信回路をカナダのUniversity of Trontが発表する(講演番号13.6)。
セッション25(RF周波数生成、GHzからTHzまで)では、無線通信基地局には不可欠である、周波数標準を生成する回路と要素技術の研究成果が登場する。注目講演は、ループフィルタのキャパシタ容量を等価的に100倍に増やす技術を開発したことで、位相雑音の低さとループフィルタの内蔵を両立させたPLL(Phase Locked Loop)回路である。中国のHong Kong University of Science and TechnologyとTsinghua Universityが共同で開発した(講演番号25.6)。80GHz帯向けで位相雑音は−91.7〜−94.6dBc/Hz(1MHzオフセット時)。消費電力は54.5mWである。
フラクショナルPLLに量子化誤差キャンセル機能を載せたデジタル周波数シンセサイザも注目される。米国のAnalog DevicesとUniversity of Californiaが共同で開発した(講演番号25.1)。1/f雑音を低減したVCO(電圧制御型発振器)の講演も注目を集めそうだ。米国のBroadcomがコモンモード共振によって1/f雑音を低減した3GHzのVCOを発表する(講演番号25.3)他、オランダのDelft University of Technologyがアップコンバージョンによって1/f雑音を削減した4GHzのVCOを発表する(講演番号25.4)。
変わったところでは、テラヘルツ波によるイメージングを想定した320GHzの位相同期送信器アレイの報告がある。米国のCornell UniversityとMassachusetts Institute of Technology、フランスのSTMicroelectronicsが共同で開発した(講演番号25.5)。輻射電力は3.3mW、等価等方輻射電力(EIRP)は22.5dBmである。
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