レンズを使わない顕微鏡を米大学が開発した。レーザーなどの光源、センサーを搭載したマイクロチップ、血液や組織などのサンプルを置くスライドガラスで構成される。従来の光学顕微鏡に比べてずっとシンプルだ。これにより、特に遠隔地での病理検査が容易になる可能性がある。
米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA:University of California Los Angeles)の研究者は2014年12月17日、大型で高価な光学顕微鏡と同等レベルの精度で、がん細胞や、その他の異常を細胞レベルで検出できる、“レンズを使わない顕微鏡(レンズフリー顕微鏡)”を開発したと発表した。血液や組織などの一般的な検査を実施するための、持ち運びしやすい顕微鏡を製造できる可能性がある。
レンズフリー顕微鏡は、サンプルを置くスライドガラス、CMOSイメージセンサーアレイを搭載したマイクロチップ、光源(レーザーかLED)で構成される、非常にシンプルなものだ。スライドガラスは、マイクロチップに直接触れることがないようサンプルホルダーに置かれる。レーザーかLEDの光を上からサンプルに当てると、イメージセンサーは、そのサンプルの影影のパターンなどを捕捉して記録する。さらに、センサーの情報を使って3次元画像を映し出す。画像を再構成するアルゴリズムによって、画像のコントラストがより強くなり、異常を検知することが容易になるという。
同顕微鏡の開発は、UCLA Henry Samueli School of Engineering and Applied ScienceのAydogan Ozcan教授が中心となって進めた。
Ozcan氏のチームは、子宮頸(けい)がん検査向けのパップスメア(細胞診検体)、乳がん細胞を含む組織標本、血液サンプルを使用して、レンズフリー顕微鏡を評価した。その結果、がん細胞検出の精度は99%だったという。
レンズフリー顕微鏡のもう1つの利点は、視野を拡大できるので、従来の光学顕微鏡よりも迅速に検体を処理することが可能になる点だ。
Ozcan氏は、「モバイル機器、特にスマートフォンを利用したヘルスケアは急速に拡大しているが、病理検査が行える場所は、臨床検査装置がそろっているところに限られている」と述べている。レンズフリー顕微鏡によってそうした障壁が下がり、特に遠隔地での検査などが容易になると期待しているという。
Ozcan氏のチームは最近、スマートフォンに取り付けるだけで、アレルギーを持つ人向けの食品検査や、水質検査(重金属やバクテリアの検出)が行える小型の機器と専用アプリを開発している。
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