半導体業界の成長促進に力を入れる中国。2015年は100億米ドルを投入するという。このうち70%が、中国国内のチップ生産向上に割り当てられる見込みで、雇用機会も生まれるとの期待もある。
中国は2015年に、国内の半導体業界の成長を促進すべく、これまでに確保してきた200億米ドルの資金のうち、半分の100億米ドルを投資する予定だという。この100億米ドルの約70%を、中国国内のチップ生産工場に割り当てる見込みだ。
中国は、半導体チップの重要な生産国としての位置付けを狙い、過去25年間にわたっていくつかの取り組みを行ってきたが、いずれも芳しい成果を挙げられていない。今回の投資は、それに続く新たな試みとなる。ある企業の経営幹部は、「中国政府は今回、市場志向型のアプローチを採用するという。このため、成功につながる良いチャンスを得られるだろう」と述べている。同社は、今回の投資資金の約半分を獲得したい考えだという。
XMCでチーフエグゼクティブを務めるSimon Yang氏は、「今回のアプローチがうまくいくかどうかは不明だが、方向性は正しい」と述べる。同社は、中国国内に2つある12インチウエハー工場の1つで、今回の資金の獲得を狙っている。
中国は現在、全世界の半導体生産量の約半分を輸入している。しかし中国国内の半導体生産量は、世界全体の10%にも満たないという。中国政府は、この大きなギャップを埋めていきたい考えだ。中国は1990年以来、約5年ごとに、半導体業界における主要な取り組みに対し、資金を提供してきた。これまでに、少なくとも6社の工場が資金提供を受けているという。
Yang氏は、2015年1月11〜14日に米国カリフォルニア州で開催された「ISS(Industry Strategy Symposium)2015」において、記者会見に登壇し、「これまでに資金提供を受けた企業の中で、自力で持続的な成長を遂げることができた企業は1社もない。一方、台湾や韓国は、今や最先端のチップ製造大国として成長している」と述べる。
中国がこれまでの取り組みに失敗してきた要因としては、政府が資金を提供する上で迅速な判断を下せず、リスクを恐れずに半導体工場を立ち上げることができなかった点が挙げられる。さらに、ほとんどの資金が、さまざまな地域の数多くのプロジェクトに対して、広く浅く割り当てられたという点もある。
Yang氏は、「今回は資金の提供先が、限られた地域の数社の企業に絞られるようだ」と述べる。ただし、どの企業が資金を受けるのか、またその具体的な金額や時期などについては、未定だという。
さらに、専門家がプロジェクト管理を行うことにより、市場原理への対応を重視するという手法を取る。
Yang氏は、「世界半導体業界にとっても、いい知らせがある。200億米ドルの大半は最終的に、生産設備メーカーの懐に入ることになるため、中国において工場関連で大量の雇用が生まれる可能性があるのだ。特に、日本で閉鎖された工場の半導体エンジニアにとっては、朗報だといえるだろう」と述べる。
XMC自身、グローバルパートナーを探している。同社は45nm/65nmプロセス技術のライセンスをIBMから供与されていることに加え、フラッシュメモリ技術のライセンスを得るべくスパンションと交渉中である。
XMCは、45nmプロセスを採用した8GビットのNOR型フラッシュメモリと、13MピクセルのCMOSイメージセンサーを既に量産中だ。同社は、垂直構造のNAND型フラッシュメモリと次世代メモリ技術への移行を目指している。
XMCは現在、ウエハー換算にすると1カ月当たり2万枚のペースでチップを製造している。同社を今後、生産量を10倍に引き上げるとしていて、それが実現したら会社を2つに分割する可能性もあるという。1つは次世代メモリに、もう1つはモノのインターネット(IoT)向けのマイコンやメモリ、センサーに焦点を当てる見込みだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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