こんにちは。江端智一です。
環境問題シリーズの最終回となる今回は、番外編として、このシリーズの執筆中に私がずっと気にかかってきた事のために使わせていただこうかと考えています。
その1つ目が、冒頭の、わが国の総エネルギー消費量を計算し直すことでした。
これまで石油の消費量を「死体数」で、CO2排出を「ウンコ」と模して計算してきましたが、日本全体としては、まだ算出していませんでした。
その結果、信じられない量のエネルギーが消費されていることを知って、本当に驚きました(今でも、何か間違いをしているのではないかと思っているくらいです)。
2つ目に、検討してみたい仮説がありました。「少子化問題を放置すれば、原発、エネルギー、温暖化の問題が同時に解決する」ということです。
仮説の内容は簡単です。
(1)少子化対策を取らずに、ほったらかしておけば(しておかなくても)日本の人口は減る
(2)日本の人口が減れば、エネルギーの消費量は減る
(3)エネルギー消費量が減れば、原発を再稼働させる必要もなく、CO2排出量も減る
というものです。
上記の(1)〜(3)の仮説を定量的に検証するには、結構面倒くさいデータ分析や計算をしなければなりませんが、こんな計算を実施する政府機関や調査会社はないと思います(業務時間中にこんな計算やっていたら怒られるだろう)。
ならば、『何を計算してもいい』とEE Times Japan編集部から言われている(言いましたよね?[※編集注)はい、申し上げました])この私こそが、この計算をするしかないと思いました。
まあ、この計算をやってみたところで、全地球規模で考えれば、大して役にも立たないかもしれませんが、それでも、これらの問題を論じる時の材料くらいにはなると思うのです。
具体的には、
の2つについて、数字を回して、この環境問題シリーズの、私なりのトリを飾りたいと思います。
では、最初に、「現在の日本の発電を、全部、原子力発電に置き換えたとしたら、どれだけCO2が削減できるか」の計算を試みます。
幸いにも、わが国では、原発を完全に停止していた期間が続きましたので、そのデータを使えば、原発がない状態で、わが国を動かすために必要な使用電力量が読み取れます。その使用電力量が分かれば、前回の連載でご紹介した方法を使って、CO2の量も読めるはずです。
計算結果は以下の通りになりました。
なるほど。京都議定書の第一次約束期間の削減量6%とは、ランクの違う効果が期待できそうです。
実際、民主党政権時の2009年に、国連気候変動首脳会合で、当時の鳩山首相が、「CO2削減25%」をぶちあげて、世界を(というか、むしろ日本国内を)驚かせたのは、原子力発電に依存するところが大きかったといわれているのも納得できる話です。
ちょっと話はそれますが、ここまでCO2排出を削減できれば、逆に、日本が、外国にCO2排出権を売る側(前回のコラムでいう「トイレをレンタルする側」)になれるかもしれません。
京都議定書の第一次約束期間で日本は、1500億円払って、1億トンの「ウンコ(CO2)をする権利」を買いました。今、その権利は値下がりしていますが、それでも、仮にこのCO2排出権を全部たたき売ることができれば(できませんが)、5000億円ほどの収益が得られる可能性があります。
閑話休題。
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