環境問題の最終回では、まず、日本の1日当たりの総エネルギー消費量を計算し直しました。その結果、“広島型原爆600発分”ということが分かったのです。その他、「日本に必要な電力を全て原発で発電したら、どれくらいCO2が削減できるのか」、「少子化問題を放置した場合、エネルギー消費量はどれくらいになるのか」について、いつものように、電卓とエクセルを使って検証します。
地球上のほとんどのエネルギー資源は、エネルギーを得るのと同時に、CO2という後始末に困る地球温暖化ガスを生成します。ところが、このCO2をこれっぽっちも作り出すことなく、エネルギーを取りだすことのできる、珍しいエネルギーがあります。
原子力です(発電所の建造過程に発生するCO2は除きます)。
原子力エネルギーは、大きく、核分裂反応によるものと、核融合によるものの2つがありますが、ここでは、原子力発電所(原発)の話に関係のある核分裂反応の方の話をします。
E=MC2という式をご覧になったことがあるかと思います。これは、アイシュタインの特殊相対性理論から導かれるエネルギーの算出式です(式の導出方法はこちらが分かりやすかったです)。
簡単に言うと、10円玉の質量(4.5g)を全部エネルギーに変換できたとすると、ざっくり400兆J(ジュール)(0.0045kg×299792458m/s(光速)×299792458m/s(光速)=404兆4398億3043万1567.938J)のエネルギーになります ―― といってもよく分からないですよね。
よく使われるのは、広島に落とされた原子爆弾を基準に考える方法ですが、この原爆の爆発力に換算すると、10円玉の質量から変換したエネルギーは、この広島型原爆6.4個分のエネルギーに相当します(404兆4398億3043万1567.938J÷6.276×1013J=6.4)。
しかし、10円玉の前で、じっと座って何年、何億年待ってもエネルギーに変わるわけではありません。原子力発電所では、ウランとかプルトニウムの中でも、特に原子核の陽子や中性子の数が、普通よりも多いものを使います。
原子力エネルギーとは、重すぎる元素が、本来のスリムな元素に「ダイエット」したいという性質に「付け込む」ことで得られるエネルギーです。
ウランやプルトニウムのダイエットは、自分の体重に対してわずか1/1000程度しか行われませんが、たったそれだけでも、膨大なエネルギーを得ることができるのです。
ところで、日本が1日で消費しているエネルギー(最終エネルギー消費量)は、39.0×1015Jになります(エネルギー白書 第2部エネルギー動向)。
これは、広島型原爆600発相当のエネルギーに相当します(39.0×1015J÷6.276×1013J)。つまり、わが国は、計算上、20万人の人間を殺傷した兵器の600倍以上ものエネルギーを、毎日消費し続けていることになるのです(参考文献)。
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