BMWが立ち上げた自動車ブランドのMINI(ミニ)は、上海モーターショーでAR(拡張現実)を採用したアイウェアを披露した。ARアイウェアを装着すれば、ナビゲーションや安全運転においてメリットがあるとしている。ARアイウェアは、果たして自動車分野に受け入れられるのだろうか。
自動車分野にAR(拡張現実)技術が浸透するきっかけとなるだろうか。MINI(ミニ)は、「第16回上海モーターショー」(一般公開日:2015年4月25〜29日)において、AR(拡張現実)を用いたアイウェア「Augmented Vision」の試作品を披露した。Qualcommとの協業によって開発したものだ。現在は、まだ大半のドライバーが、自動車のフロントガラスに情報を提示するヘッドアップディスプレイ(HUD)を受け入れるには至っていない状況ではあるが、MINIは未来の革新的な自動車の実現に向けて、次なる段階へと飛躍を遂げようとしている。
MINIは、Augmented Visionによって、HUD機能とAR機能をドライバーの視界に取り入れる考えだ。ナビゲーション情報をはじめ、ドライバーにとって必要なデジタル情報を、アイウェアのレンズ(ディスプレイ)上に直接映し出せるようにする考えだ。
正確に言うと、MINIのAugmented Visionは、現在まだ研究プロジェクトの段階にある。BMW Group Technology Officeの経営幹部は、EE Timesによるインタビューの中で、試作段階のAugmented Visionを製品化する時期については、詳細を明かそうとはしなかった。
それでも、Augmented Visionからは、ARとコネクテッドカーが今後、(互いに衝突することがなければ)共に向かっていくであろう未来像を、垣間見ることができる。
Augmented VisionのHUD機能は、実現すれば非常に効果的で使い勝手のよいものになりそうだ。例えば、走行速度や制限速度などの関連情報を、ドライバーの視野の中心部に投影するという機能がある。この他にも、興味深い機能として挙げられるのが、「X線画像表示」だ。シースルーディスプレイと位置追跡技術を組み合わせることによって実現したという。
QualcommでAR向けプラットフォーム「Vuforia」担当バイスプレジデントを務めるJay Wright氏は、「例えば、ドライバーが横を向くと、自動車のドアの金属板を透視した映像がメガネに映し出される。路上にいる子どもや犬など、通常であれば見えないはずの対象物を確認することが可能だ」と説明する。「Vuforiaを採用したことにより、自動車の外側に取り付けられているカメラで撮影したライブ映像を、メガネのレンズ上に正確な背景/位置で投影することができる」(同氏)。Vuforiaは、ARアプリケーションを作成するためのAR SDK(Software Development Kit)を開発者向けに提供している。
BMW Group Technology Officeでシニアアドバンスドテクノロジーエンジニアを務めるRobert Richter氏は、「今回の試作品では、ヘッドユニットとコンピューティングユニットをWi-Fiで接続し、ビデオ信号を転送している。さらに、MINIに2台のカメラを追加することでX線画像表示を実現し、駐車の際に縁石を確認することなども可能だ」と述べている。
ただし、IHSで車載分野のアナリストを務めるMark Boyadjis氏は、Augmented Visionの接続性について疑問を持っているという。「Augmented Visionは車内から電力を供給されているわけではないので、搭載するWi-Fi接続機能は、非常に堅ろうでなくてはならない。長距離を運転する場合などに備えて、長い電池寿命も要求される」(同氏)。
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