日本電波工業がこのほどサンプル出荷を開始した水晶発振器「DuCULoN」(デュカロン)。デジタルオーディオ音源を忠実に再現させるため、技術の粋を集め測定限界まで位相雑音を減らしたという1個15万円という異色の水晶デバイスに迫った。
CDにもこれほどの豊かな音源が含まれていたのか――。
オーディオ愛好家に、こうした感銘を与えているというデバイスが登場した。日本電波工業の水晶発振器「DuCULoN」(デュカロン)だ。
音と発振器という関係は意外に思われるかもしれないが、CDなどに代表されるデジタル音源を用いるオーディオの世界では密接な関係がある。
デジタル音源は、スピーカーで音としてならすためには、D-A(デジタル-アナログ)変換が必要になる。デジタルデータのままであれば基本的に劣化しないデジタルデータだが、このD-A変換時に劣化が生じる。D-A変換器(D-Aコンバータ/以下、DAC)でデジタルデータがアナログ信号に変換されるときに、クロック雑音が重畳され、原音が雑音でマスクされ全てのデジタルデータをアナログデータ化できないからだ。「レコードなどアナログ音源は豊かだが、デジタル音源は小さな音が再現されておらず、“デジタル的”」と見なされるのも、DACでの変換精度のまずさが主因だ。
デジタル音源でも、より豊かな音を再現するには、このDACの変換精度を高める必要がある。そして、このDACの変換精度(すなわち、オーディオ特性)を左右するのが、オーディオマスタークロックだ*)。そして、このクロックを生成するのが、水晶発振器であり、水晶発振器の性能がデジタルオーディオの音質を左右するわけだ。
*)オーディオマスタークロックがDACのオーディオ特性に影響を及ぼす仕組みはEDN Japanの記事「デジタルオーディオの基礎から応用(5):誤解していませんか!? クロックジッタの「真実」を解説」が詳しい。
具体的には、発振器の位相雑音が、DACの変換精度を左右する。理想的なクロック信号は、適切なタイミングだけ周波数スペクトラムを発することだが、実際には雑音を含み、クロック周波数近傍の信号を含んだスペクトラムを発してしまう。このクロック周波数近傍のスペクトラムが位相雑音であり、位相雑音が大きければ、結果としてクロック周波数が変動し、それにより、DACのサンプリング周波数も揺らぎ、忠実な音の再現ができなくなるのだ。
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