調査会社のYole Développementは、2023年の車載用バッテリーの年間需要は、住宅や系統電力との連携など応用範囲が拡大することも手伝い、2014年の27倍となる約250GWhに達するとの予測を発表した。ただ、車載バッテリーの他分野への展開には、まだ課題も山積する。
フランスの市場調査会社であるYole Développementによると、車載用バッテリーを多角的に応用しようとする企業が増えているため、車載用リチウムイオンバッテリーの需要が伸びているという。ただし、急激に成長している市場では慎重な対応が必要だ。
Yole Développementは、「こうした動きは、運送会社や電力会社、バッテリーセルメーカー、自動車メーカー、化学会社などに影響を及ぼす可能性がある」と指摘する。この他にも、建築業者が組立住宅にバッテリーを組み込んだり、パワーエレクトロニクスメーカーがバッテリー充電器や変換器の開発に注力するなど、バッテリー市場が活性化しているという。
Yole Développementはプレスリリースの中で、「Tesla MotorsやBYD(比亜迪)といった一部の電気自動車メーカーは、定置型蓄電池エネルギーストレージシステム(BESS)も提供しているため、エネルギー企業と捉えられることもある。これらの企業バッテリーセルを大量購入/量産することによってバッテリー価格を抑えたいと考えている」と述べている。
だが、車載バッテリーの年間需要は、その他の需要と比べてはるかに多い。
Yole Développementは、「2023年には、完全な電気自動車やハイブリッド車向けバッテリーの年間需要は、2014年の27倍となる約250GWhに達する」と予想する。一方、ビルのエネルギーストレージシステムやより大型の定置型蓄電池の需要は、車載需要と比べると少なく、2014年の全バッテリー需要の5%にも満たない。
「こうした状況を考えると、バッテリー市場の成長は一筋縄では進まない」とYole Développementは指摘する。
Yole Développementの担当者はEE Timesに対して、「定置型蓄電池市場は急速に成長し、2023年には年間需要が37GWhを超えると予想される。特に、小型定置型蓄電池の需要は他の産業よりもかなり大きな成長が期待され、2023年までに135億米ドルに達する見通しだ」と語った。
日産自動車やトヨタ自動車などの自動車メーカー数社は、車載バッテリーを使用したVehicle to Home(V2H)やGrid to Vehicle(G2V)システムの開発を手掛けている。BMWは、車載バッテリーの別の用途として、定置型蓄電池システムでの使用を検討している。これ以前にも、こうした取り組みは行われてきた。
車載バッテリーにはさまざまな化学的性質やセルタイプ、構造があるため、車載以外の用途を確立するのは簡単なことではない。Yole Développementは、「BESSコンポーネントなど別の用途に使用するには、安全性/性能試験を行う必要があり、車載バッテリーの分類/廃棄などの実質的な問題も発生する」と指摘する。
さらに、規制への対応も必要となるため、車載バッテリーを他の分野に使用できるようになるには時間がかかる可能性もある。しかし、Yole Développementは、「規制によって同市場の成長が阻害される可能性はない」と予想する。同社は、「バッテリーの需要は世界的に伸びていて、1つの地域の市場が伸び悩んだとしても、他の地域の成長によって補完される」としている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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