韓国公正取引委員会が、Qualcommに対し、独占禁止法(独禁法)違反の疑いで報告書を提出した。Qualcommは複数の国において同様の調査を受けていて、中国とはようやく折り合いが付いたばかりだ。
韓国公正取引委員会(KFTC:Korea Fair Trade Commission)が、Qualcommに対し、違法なライセンシング慣行の是正と罰金の支払いを求める報告書を提出した。
Qualcommは、この報告書を受領し、今回の申し立てに対する対応や弁護の準備を進める機会が与えられたことを認めている。同社は発表資料の中で、「審査官報告書に記された申し立て内容や結論は、事実に基づいておらず、法律が著しく誤用されている」と主張している。
罰金の金額については明らかにされていないが、同様の事例を見ると、最大で年間売上高の約10%を課せられる場合が多いようだ。
Qualcommはこれまで、さまざまな国で独占禁止法違反を疑われてきたが、今回の韓国の件は最も新しい勧告となる。Qualcommは2015年2月に、中国国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)が1年以上にわたって行った調査結果を受け、ようやく特許紛争に終止符を打ったところだ。最終的にはQualcommが、9億7500万米ドルの罰金を支払い、中国の携帯電話機メーカーが支払う特許使用料率を従来の約3分の2に引き下げることになった。
また、欧州委員会(EC)も現在、Qualcommが3G/4G対応のベースバンドチップを販売する際に、インセンティブ(報奨金)を提供していたかどうかや、略奪的価格設定などを行っていたかどうかについて調査を行っている。
Qualcommは発表資料の中で、「“デバイスのライセンス供与”については、世界的な業界水準であり、当社も約20年間にわたって行ってきた」と主張している。
一部の観測筋は、今回の調査結果によっては、QualcommとSamsung Electronicsの目まぐるしく変化する関係性に何らかの影響が及ぶ可能性があるとみているようだ。Qualcommは、これまで長年にわたり、自社のアプリケーションプロセッサ「Snapdragon」をSamsungに供給してきた。しかし、Samsungは2015年初め、同社のスマートフォン「Galaxy S6」に、自社開発の8コアプロセッサ「Exynos 7 Octa」を搭載することを明らかにした。それに伴い、Qualcommの業績が傾き始めている。
Qualcommは、Samsungが2016年に発表を予定している新型スマートフォン「Galaxy S7(仮称)」をはじめ、その他の端末に、自社の「Snapdragon 820」プロセッサが採用されることを望んでいる。しかし、Samsungは最近、新たに「Exynos 8」プロセッサを開発したと発表したところだ。
Qualcommは、KFTCの聴聞に対して強く反論していくとしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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