中国がQualcommに対し、独占禁止法に違反したとして罰金の支払いを命じた。同時に、Qualcommの特許使用料率も引き下げている。
中国の北京当局が2015年2月9日、Qualcommに対し、独占禁止法に違反したとして9億7500万米ドルの罰金支払いを命じた。これにより、約2年間にわたって繰り広げられてきた特許係争に終止符が打たれることになる。
中国国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)は、今回のケースを“独禁法違反事件”として調査したとしている。しかしもっと正確な表現をすれば、NDRCは、中国の携帯電話機メーカーがQualcommに対して支払う特許使用料率を引き下げることに成功したといえるのではないだろうか。
金融界では、今回の判決結果を受けて安堵感が広がり、Qualcommの株価はアフターマーケット取引において3ポイント上昇している。
今回の中国当局の判決によると、Qualcommの特許使用料は、3G/4G対応マルチモード端末(3G/4G対応マルチモード端末など)で端末販売価格の5%、その他の4G対応ハードウェア(3モードLTD/TDD端末など)では同3.5%になるとされている。ここで注目すべきは、特許使用料率が今後、メーカー側の正味販売価格に対してではなく、端末の正味販売価格の65%を基準として算出されることになったという点だ。Qualcommの特許使用料率は通常、端末の正味販売価格100%に対して算出されている。
実際に計算してみよう。3Gの場合の特許使用料率は、5%の特許使用料に0.65を掛けて3.25%となる。4Gの特許使用料率は、端末の正味販売価格の3.5%であるため、特許使用料率は2.275%となる。
一部のアナリストはこれについて、「最悪の事態が起こり得る可能性があった中、不幸中の幸いともいえる結果だ」と好意的に見ているようだ。Qualcommは今後も、中国国内で販売されるすべての3G対応端末に対して3.25%の特許使用料を、4G対応端末に対しては2.275%の特許使用料を得ることができるのだ。
しかし、Qualcommの中国以外の顧客企業は、現在も正味販売価格の100%をベースとした特許使用料を支払っている。これらの顧客企業が今後、Qualcommに対して中国と同様の措置を求めるようになったとしたら、いったいどうなるのだろうか。
Qualcommは単に、「今回の判決によって、中国以外の国のライセンス供与に変更が生じることはない」と主張している。
Qualcommは、同社の独占的慣行に関する調査が現在行われている、米国やEUなどの各国の規制当局が、価格決定について干渉するようなことはないと決めてかかっているようだ。
実際にそうなのかもしれない。しかし、中国以外のQualcommの顧客企業が、このようなダブルスタンダードに黙って従うとは思えない。
興味深いことに(それほどの事ではないかもしれないが)、今回のQualcommとNDRCとの合意によって多大なメリットを得ることができる企業がある。それは、中国最大のファウンドリSMICだ。Qualcommは、今回の措置の一環として、SMICとの協業関係を強化していくことに合意している。Qualcommは2014年夏、SMICとの間で、28nmプロセスを適用したプロセッサ「Snapdragon」の製造に関する契約を締結している。
これによって、現在、Qualcommの主要ファウンドリであるTSMCは、売り上げの一部を失うことになるかもしれない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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