青山学院大学経営学部の玉木欽也教授は、図1の「市場浸透」「市場開発」の部分を「顧客創造」、そして「製品開発」「多角化」を「事業創造」と提唱している(図2参照)。
第3回において、DVDプレーヤーを例として、電機メーカーがモノづくりでは世の中に大きく貢献したにもかかわらず、「いいものはできたが売れなかった(買ってもらえなかった)」ことが、アジア諸国勢企業に負けてしまった理由であると説明した。すなわち、イノベーションによって価値創造ができても、企業は価値獲得として適切な対価を得られなかったのである。この話を、ここで思い出してもらいたい。
さらに、第6回以降は「製品アーキテクチャ」について、さまざまなタイプの製品アーキテクチャの違い、差別化や競争優位について述べてきた。これらも前項、価値創造・価値獲得と一緒に再度、頭の中に呼び起こしながら、図3をご覧いただきたい。
左側が素材・材料市場であり、右側に行くにつれて部品、モジュール、製品、さらにサービス(ソリューション)市場と、よりマクロになっていく。それぞれの市場には、「新規参入(企業)の脅威」が存在する。
仮に、皆さんの会社(=自社)がモジュール市場に位置しているとしよう。
先の「顧客創造」と「事業創造」をそれぞれ当てはめて考えてみたい。
顧客創造の領域は、「既存製品を用いる市場(既存/新規)戦略」である。
先ほど、「“市場浸透”は、企業は市場も製品も何ら変えることなく成長機会を捉えることができる。“市場開発(開拓)”は、販売数量が伸びることによる量産効果が生まれ、結果的にコストダウンにつながり、売上拡大を可能とする成長戦略である」……などとサラッと書いたが、問題は、既存製品にそこまでの競争力があるのかということである。つまり、競合が多い既存市場で勝てるのか? 新規市場にたやすく打って出られるのか?、ということだ。
これまでに、電機業界、とりわけデジタル家電は新製品が登場しても、その価格下落は激しく、コモディティ状態になりやすいことも述べてきた。
従って、企業は、どうやって「顧客創造」を行うかを考えなければならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.