M&Aの嵐が吹き荒れた2015年の半導体業界。上半期に超大型買収劇が相次ぎ、M&Aの嵐は一段落するかと思いきや、下半期も止むことはなかった。2015年7月以降に起こった主な半導体業界の買収/合併劇を振り返っていこう。
大型再編が次々、発表される中で、日本勢はほぼ蚊帳の外だったが、下半期に入り、規模は小さいながらも、ロームが動いた。
ロームが買収したのは、アイルランドに本社を置くファブレス半導体メーカー Powervationだ。買収額は約7000万米ドルだった。
Powervationはデジタル電源のコントローラLSIが主力。ロームは近年、強化してきたパワーデバイスとの相乗効果が見込めると判断し買収に至った。
2014年10月に合意していたQualcommによるCSRの買収が完了した。買収額は24億米ドル(2985億円)で、2014年10月の合意時に見込んでいた16億英ポンド(約2700億円)を上回った。
Qualcommが、Bluetooth Smart関連やオーディオ処理の技術に強みを持つCSRを買収した狙いは、IoE(Internet of Everything)分野および車載インフォテインメント分野向け事業の強化だ。主力のスマートフォン向けSoCの成長に陰りが見え始め、業績が低迷傾向にある。Qualcommは、CSR買収などを通じスマートフォン市場以外でのビジネス成長を狙うとともに、2015年は全従業員の15%に相当する4700人を解雇するリストラ策を発表し事業構造改革に取り組んでいる。
産業革新機構などの出資を得て、経営再建を進めてきた日本インターに対する京セラのTOB(株式公開買い付け)が2015年8月に成立し、同年9月に実施された。京セラは、日本インターの発行済み株式の69.33%を取得、日本インターを子会社化した。買収総額は約105億円だった。
日本インターはダイオードなどのディスクリート半導体事業や、パワーモジュール事業などを手掛ける。ダイオード製造では、大口径となる8インチウエハーによる製造をいち早く開始したが、リーマンショック前後から売り上げが低迷。8インチウエハーラインへの投資も重荷となり、2011年3月に債務超過に陥った。その後、産業革新機構などの出資を得て、再建を図り、債務の返済、事業の黒字化を達成。出資者側が売却先を模索していた。
そうした中で、半導体パッケージを手掛ける京セラが名乗りを挙げてTOBを実施。京セラは、日本インターを上場連結子会社とし、ブランドと経営の自主性を維持しつつ、販売や物流面で連携し、相乗効果を発揮させていく方針だ。
英Dialog Semiconductorが、米Atmelを買収すると発表した。買収額は、46億米ドル。
Dialogは、パワーマネジメントICが主力で、近年は、AppleのiPhoneなどに採用され実績を残してきた。その半面、2〜3社のスマートフォンメーカーに売り上げの大半を依存するというリスクを抱えてしまっていた。そこで汎用マイコンを展開するなど、多数の顧客、製品ラインを持つAtmelを買収することで、スマートフォン一本足打法によるリスクを回避。またAtmelはタッチパネルコントローラICなどにも強く、主力のスマートフォン分野でのシナジーも見込めるという利点もある。
Dialogは2015年9月の買収発表時、2016年3月の買収完了を目指すとしていたが、2015年年末になり、買収成立が不透明になりつつある。
2015年12月に入り、Microchip Technologyが、Atmelに対抗買収案を提示したというのだ。
Dialogが同年9月にAtmelに提示した買収額は48億米ドルだったが、その中にはDialogの株式も含まれており、買収発表後にDialog株が下落。買収額は結果的に大きく目減りしていた。そうした中で、Microchipは38億米ドルの対抗買収案をAtmelに持ち掛けたとされる。MicrochipとAtmelは互いにマイコンを主力とする競合中の競合。多くの製品が重複するとみられるが、Microchipにとっては、Atmel買収により苦戦している車載マイコンを強化できるなどのメリットもある。なお、MicrochipはOn Semiconductorとともに、2008年10月にもAtmelに対して、23億米ドルの買収を提案したが、Atmel側が拒否したという経緯がある。
Atmelは今後、Microchipの買収提案も検討し、2016年3月にDialogによる買収提案を受け入れるか否かの株主投票を実施する予定だ。
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