今回発表した電子タグは、物流分野で必要な「低い/正常/高い」の3段階の温度情報を検出、送信できる2ビット分解能の温度検出機能を備えながら、NFCなどの規格に準じるために必要な動作周波数26.5kHzの高速動作に対応させたものだ。
東京大学新領域創成科学研究科教授の竹谷純一氏は「過去1年間で、製造の精度を高めることで、以前はまれに計測できていたキャリア移動度16cm2/Vsを、高頻度で達成できるようになり、高速動作と素子の小型化を実現できた」とする。
1年前の電子タグは、10×20mm程度のチップに100個程度のトランジスタの集積にとどまったが、今回の電子タグは、300〜400個のトランジスタを集積。温度検出用A-Dコンバータの分解能を1ビットから2ビットに高めた他、デジタルデータ処理能力も従来の4ビットから8ビット(3ビットD-フリップフロップ)に拡張し、高機能化させた。
また、今回の大きな開発成果としては、従来、デジタル回路部などの一部で残ったガラス基板の使用をやめ、全てフィルム基板上に回路やアンテナを形成することに成功した。竹谷氏は「回路部は現状、高価なポリイミドフィルムを使用しているが、100℃以下で回路形成できるため将来的には(より安価な)PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)にも形成できる見込みだ」との見通しを語る。
東京大学、トッパン・フォームズなどでは、有機半導体による電子タグを2018年に商用化する目標を掲げる。
商用化に向けた課題について竹谷氏は「現状、10×20mm程度のチップサイズを、製造の精度を高めるなどし5mm角程度まで小さくしたい。また、素子レベルで実現している有機半導体/有機強誘電体を使った印刷可能なメモリを、メモリアレイとし、実装する必要がある。今後、1年でメモリを搭載したより高集積な電子タグを実現したい」とした。
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