CPUアーキテクチャの基礎:福田昭のデバイス通信 ARMが語る、最先端メモリに対する期待(5)(2/2 ページ)
全ての命令をプログラムの順番通りに実行していくこと(「インオーダー実行」と呼ぶ)は、実効的な処理性能を高めるときには望ましくないことがある。例えば、キャッシュにアクセスするときに待ち時間が発生したり、あるいは、実行するのに時間のかかる命令に遭遇したりすると、処理性能が低下する。
そこで、あえて命令の実行順序を入れ替えることで待ち時間を削減し、実効的な処理性能を上げる手法がある。これが「アウトオブオーダー実行」である。複数のパイプラインを備えて並列に実行するスーパースカラー構造のCPUでは特に、アウトオブオーダー実行が威力を発揮する。
ただし、アウトオブオーダー実行を採用すると実効的なスループットは高まるものの、回路は大規模になる。シリコン面積と消費電力は増加する。そして、メモリ・システムが複雑になる。
インオーダー実行とアウトオブオーダー実行の概要(クリックで拡大) 出典:ARM
これまで説明してきたのは、CPUコアが1個、すなわちシングルコアで処理性能を向上させる工夫である。しかし既に説明したように、シングルコアで性能を向上させる手段は、消費電力の制約によって行き詰まりを迎えている。
そこでマルチコアという選択肢が登場した。シングルコアでパイプラインを増やす代わりに、CPUコアの数を増やすことによって性能向上を図る。一般的には、シングルコアで動作周波数を上げたり、能力を高めたりすることに比べると、少ない消費電力でスループットを高められる。
ただし複数のCPUコアを高効率で利用するソフトウェアの作成と、CPUコア間の物理的な通信リンクの確立という課題が生じる。そしてここでもまた、メモリ・システムが複雑になるのだ。
マルチコアの利点と弱点(クリックで拡大) 出典:ARM
(次回に続く)
- PCIeが今後の主流に
今回から始まるシリーズでは、SSDインタフェースの最新動向に焦点を当てて解説する。SSD関連のインタフェースは数多く存在するが、近年、採用が進んでいるのがPCIeだ。
- 革新的な磁気メモリ材料の発見か
東京大学物性研究所の中辻知准教授らの研究グループは2015年10月29日、反強磁性体において異常ホール効果を「世界で初めて観測した」と発表した。同研究グループは高密度/高速な不揮発性メモリ素子の実現につながる発見としている。
- 3D NANDフラッシュの競争は激化へ
Micron Technologyは「ISSCC 2016」で、3ビット/セルのフローティングゲート方式を適用した、768Gビットの3次元(3D)NAND型フラッシュメモリを発表した。読み出し速度は、800Mバイト/秒だという。3D NANDフラッシュの競争が激化することが予想される。
- IEDMで発表されていた3D XPointの基本技術(前編)
米国で開催された「ISS(Industry Strategy Symposium)」において、IntelとMicron Technologyが共同開発した次世代メモリ技術「3D XPoint」の要素技術の一部が明らかになった。カルコゲナイド材料と「Ovonyx」のスイッチを使用しているというのである。この2つについては、長い研究開発の歴史がある。前後編の2回に分けて、これらの要素技術について解説しよう。
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