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TIが600V動作GaN製品、駆動回路を内蔵GaNデバイスの潜在能力を最大限引き出す

日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、動作電圧600V、オン抵抗70mΩのGaN(窒化ガリウム)FET(電界効果トランジスタ)とその駆動回路を、ワンパッケージに統合した出力電流12Aのパワーステージ「LMG3410」を開発、エンジニアリングサンプル(ES)品の出荷を始めた。

» 2016年04月26日 16時15分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2016年4月26日、動作電圧600V、オン抵抗70mΩのGaN(窒化ガリウム)FET(電界効果トランジスタ)とその駆動回路を、ワンパッケージに統合した出力電流12Aのパワーステージ「LMG3410」を開発、エンジニアリングサンプル(ES)品の出荷を始めると発表した。

LMG3410の外観

 LMG3410は、自社製造のGaN FETを搭載した初めての高電圧GaNソリューション製品となる。従来のシリコン(Si)ベースの半導体素子を用いた昇圧型PFC(力率改善)製品に比べて、LMG3410を搭載したトーテムポール型PFCは、電力損失を半減することが可能だという。また、搭載する部品点数の節減や効率の改善によって、電源サイズを最大50%縮小することができるなど、電力密度を高めた。

 しかも、パッケージの浮遊インダクタンスを削減した。GaN FETとその駆動回路を、外形寸法8×8mm、厚み0.9mmのQFNパッケージに集積している。これにより、システム設計者が素子単体を組み合わせて同じ回路を構成していた場合に比べて、電力損失やEMI(電磁干渉)を低減することが容易である。「GaNデバイスが有する本来の特性を最大限に引き出すことが可能になる」(同社)とみている。

 LMG3410をはじめとするGaN製品は、トーテムポール型のブリッジレスPFC回路やLLC共振型コンバーターなどハードスイッチングのハーフブリッジ用途に適している。同社はサーバーや通信装置のAC-DC電源、モータドライブ回路、太陽光発電(PV)用インバーター、ラックマウントのDC電源分配などの用途に提案していく。

 LMG3410とUCDデジタルコントローラ「UCD3138」を搭載した、TI製の1kWトーテムポール型PFCモジュールでは効率99%を達成しているという。また、100kHzのスイッチング周波数により、モジュールサイズは従来製品を用いた場合に比べて30%縮小することが可能となった。

 LMG3410は、開発キット「LMG3419-HB-EVM」の形態で供給を始める。このキットには、2個のLMG3410が実装されたハーフブリッジドーターカードと、それとは別にサンプルICとして4個のLMG3410が含まれる。参考価格は299米ドルである。また、ドータ―カードを装着できるシステムレベルのGaN出力段ブレークアウト評価マザーボード「LMG34XX-BB-EVM」も供給を始めた。参考価格は199米ドルとなっている。これらの製品はオンラインショップ「TI Store」で購入することができる。なお、LMG3410の量産開始は2016年後半かそれ以降になる見通しである。

開発キット「LMG3419-HB-EVM」の外観。ドータ―カードとは別に、4個のLMG3410(右端)も含まれており、チップ単体での評価も行うことができる。

 同社は、2015年3月に外部調達のGaNデバイスを内蔵した動作電圧80VのGaN FETパワーステージ「LMG5200」を発表した。この製品とコントローラIC「TPS53632G」などを搭載した48V-1V POL評価モジュール「LMG5200POLEVM-10」も用意するなど、これからもさまざまなGaNソリューションを拡充していく計画である。

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