高い世界シェアを誇る同社がライフサイエンス分野を手掛けるに至った背景はどこにあるのだろうか。山田氏はまず、材料メーカー/セットメーカーとともに培ってきた光源を中心とした独自の光技術を挙げる。材料の扱い方や光学系のノウハウを応用した技術が、ライフサイエンス分野に生きているという。
また、光で洗浄するときに行われる“表面改質”も重要な点である。172nmと短い波長のVUVエキシマ光を汚れ有機物に照射することによって、表面改質がおき、汚れを揮発させる。山田氏は、「有機物というのは、“人体”でもある」と語る。つまり、エレクトロニクス分野で培った光のコントロールや表面改質技術は、皮膚や細胞に対しても応用できるのだ(臨床試験を重ねて、安全性は担保されている)。
ライフサイエンス分野の中でも、特にスキンケア事業は「ここ3〜4年で取り組み始めた事業であり」(山田氏)、同社が注力する領域の1つである。2016年3月には、ケミカルピーリング用美容せっけんなどを扱うサンソリットを買収。ウシオ電機は、紫外線治療器「セラビーム UV308」を展開しており、事業拡大におけるシナジーが期待される。
山田氏は、ライフサイエンス以外の今後注力していく分野として、1)露光、2)映像装置、3)固体光源を挙げる。「“装置を作ってお納めして終わり”ではなく、トータルソリューションビジネスの拡大を進める」と語る。
映像装置事業では、既にトータルソリューションの展開が進んでいる。プロジェクターをネットワークでつなぎ、稼働状態のモニタリングができるようになった。ネットワークにつながると、配給する映画に合わせたロビー広告ができる。つまり、映像装置と連動したデジタルサイネージによるトータルソリューションサービスの提供が可能になる。米国では、同種のプロジェクターが既に数万台導入されているという。
露光分野においても、映像装置事業のノウハウを応用したトータルソリューションでの提供を進めていく。例えば、露光装置の稼働状況をネットワークで監視することによって、生産性の向上につなげることが挙げられる。ライフサイエンス分野の装置においても、ビッグデータを活用したサービスの提供を今後考えていくとした。
山田氏は、「今までは、光源のリプレイス需要がビジネスを下支えしてきた。これからは光源を持つ強みを生かしながら、トータルソリューションとして付加価値をつけることで、売上高53%を占める装置事業の収益改善をしていく」と語った。
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