さて、ここから、いわゆる「鉄道人身事故」の中でも、特に「自殺」についての分析を始めたのですが ―― しょっぱなからつまずいてしまいました。
というのは、(1)その「自殺」が明確に定義されていない、または(2)「自殺」を判断する主体(主には警察なのですが)によって、人身事故の“区別”(自殺か、それとも単なる事故なのか、など)が、独自に判断されているからです。
「明確な定義がない」ということもあるのでしょうが、その人身事故の当事者の内面(心の中)やその時の心理状態までは分からない、ということが最大の要因と考えられます。
上記の全ては「自殺」とも「事故」のどちらとしても判断され得ます。遺書などがなければ、状況証拠(自殺をほのめかしていたとか、病気や借金で苦しんでいたとか)から、判断されることになります。
例えば、下図は2008年のデータを円グラフに起こしたものです。
「線路立ち入り78件」で「死者65人」と表示されていますが ―― えー……、これが自殺でないとすれば、この人たちは、一体何をしていたのでしょうか? (「ホーム転落」は、別のカテゴリーで集計されているので該当しません。)
例えば、認知症などで、『線路に入り込んで、ボーっと電車がくるまで線路で立っていた」というケースも考えられますが、それにしては人数が多すぎるようにも感じます。
散々悩んだ後、―― 考えるのを止めました。
この連載では、基本データは(1)内閣府発行の「自殺対策白書」と、人身事故の発生件数については、(2)「全国鉄道人身事故ランキング」サイトで公開されているデータをベースとすることにしました。
また、飛び込み自殺は、暫定的に、全数を鉄道人身事故によるものとしました。実際は、トラックなどへの身投げ自殺などもあるのですが、データとして明確でなく、またニュース数も少なかったためです。
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