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中堅研究員はAIの向こう側に“知能”の夢を見るかOver the AI ――AIの向こう側に(1)(8/8 ページ)

» 2016年07月27日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]
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いいかぁ、ファジィ推論っていうのはなぁ――

 さて、本連載“Over the AI”の後半の目的は、「AI」と呼ばれるもののメカニズムを「理解する」あるいは「理解したつもりになる」ことです。

 そこで、今回のファジィ推論について、飲み会でちょっと「知ったかぶり」をして語りたい方のために、暗記していただくこと3つと、本当に困った時の最後の手段を記載しておきます。

 いいかぁ、ファジィ推論っていうのはなぁ――

(1)自分でルールを勝手に決めていいんだ。そんでもって、ルールはいくつ追加したって構わないし、ルール同士が矛盾したって全然問題ないんだ

(2)なんでかってか? それはな、メンバーシップ関数という、主観を取り扱う簡単な関数を自分の好きなように勝手に作って、その関数を使って、どんな入力値からでも、ファジィ数という、矛盾を含んだままの推論結果を取り出せるからだよ、あ、分かるか?

(3)矛盾している結果は、数値を平均するなどして推論結果としてしまえばいいんだ。うん? どうやって複数のルールをまとめているかって? それはだな、マムダニ教授が考案した、Min-Max法という方式を使って……あ……ちょっと待て(ここで、あなたはスマホを取り出す)、この図を見れば分かるだろう? 分からん? そうか、分からんか。仕方ねーなー、じゃあ説明がうまいやつを、1人知っているから、ちょっとだけ待ってろ

と言って、

(4)江端に直接電話する

でO.K.です。

最後に、一言

 では、最後に一言。

 私は、現在の「人工知能ブーム」にケチをつけようという意図は全くありません。

 人工知能を「ブーム」と決めつけている時点で、既に、その意図があると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが――。

 私としては、そのブームが去り、波が消え、完全な凪(なぎ)になった時の、あの荒涼たる寂寥(せきりょう)感だけは、どうしても(特に若いエンジニアに)伝えておきたいのです。

 例えば、

  • あんなに騒いでいた世間が、まるで、何もなかったかのように振る舞い、
  • 会社の5年研究開発計画大綱が、初年度でどこかに消えてなくなり、
  • 大型予算を組んでいたハズの政府や官公庁が、「そんなこと言ってたっけ?」とばかりに、別の技術の名前を冠する予算にすり替わり、

そして、

  • 気が付けば、自分が、全く関係のない仕事をやっている

ということを、私は文字通り、腐るほど見てきたのです。

 しかし、そういうことを、「理不尽」と思ったら「負け」です。

 ブームとは、どのようなものであれ、輝かしい「モテ期」と、どん底の暗闇に突き落とされる「非モテ期」の両方を、運命的に包含しているものだからです。

 私たちエンジニアは、エンジニアリングの観点から、その「ブーム」のライフサイクルをトコトン理解した上で、その「ブーム」を効率よく活用する必要があります ―― そして、その話は、この連載の中で、言い尽すつもりです。

 実際、このようなブームがあるからこそ、ある分野の研究が、突然、飛躍的に発展し、社会に貢献しているのも、また事実なのです。

 私は、エンジニアの仕事の中には「このようなブームを積極的に活用して、波に乗り、研究や製品開発を加速させることも含まれている」とすら思っています。


 それでは、今回より開始する新連載「Over the AI ――AIの向こう側に」、ご愛読の程、なにとぞ、よろしくお願い致します。



Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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