2017年に発売される予定のメルセデス・ベンツのプラグインハイブリッド車(PHEV)「S5501e」にワイヤレス充電機能が搭載されるという。Qualcomm(クアルコム)の技術が採用されるようだ。
Daimler(ダイムラー)が2017年に発売するMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の「S550e」は、Qualcomm(クアルコム)のWEVC(Wireless Electric Vehicle Charging)技術を市販の自動車として初めて搭載したプラグインハイブリッド車(PHEV)になることが明らかになった。
Qualcommによると、ワイヤレス充電機能を備えた新型車を、専用の“ホットスポット”の上に駐車するだけで充電が始まるという。ユーザーは、ケーブルの管理やもつれなどから解放されることになる。
Qualcommは数々のティア1サプライヤーとWEVCに関するライセンス契約を締結してきた。つい最近では、2016年6月に自動車のシートと電気系統の世界的なサプライヤーである米Lear Corporationとライセンス契約を結んでいる。
Qualcommは1年前にもスイスのBrusa Elektronikと同様の契約を結んだ。Brusaは電気自動車向けに高効率のパワーエレクトロニクスを開発している。同社はティア1サプライヤーとして、ワイヤレス充電機能を搭載した今回の新型車の開発に貢献している。
Qualcommの事業開発およびマーケティング部門のバイスプレジデントであるAnthony Thomson氏によると、QualcommはこれまでChargemaster、Efacec、RicardoともWEVC技術のライセンス契約を結んでいるという。
Thomson氏は、Qualcommのワイヤレス充電技術はこれまで、実証実験のためにさまざまな自動車プラットフォームに統合されてきたが、いずれの実験も成功していると述べた。実証実験に用いられた車種としては、Renault(ルノー)の「Fluence」や「Zoe」、日産自動車の「リーフ」、BMWの「BMWi3」「BMWi8」、三菱自動車の「i-MiEV」、本田技研工業(ホンダ)の「アコード」などが挙げられる。
では、S550eがワイヤレス充電機能を備えることは、どれくらいインパクトがあることなのだろうか。ワイヤレス充電市場に目立った変化をもたらすのだろうか。
Strategy AnalyticのAutomotive Practice部門でシニアアナリストを務めるKevin Mak氏は、EE Timesに対し、「S550eは標準装備として電磁誘導の充電システムを搭載しており、ワイヤレス充電をオプション機能として追加するには1000〜2000米ドルのコストが掛かる。その上、ワイヤレス充電のオプションを加えられるのは、もともと高級なメルセデス・ベンツシリーズの中でも最高級モデルだけだ。これらの点を踏まえると、S550eがワイヤレス充電機能を備えたことはそれほど一大事とはいえない」と語った。
だが、これが象徴的な出来事であることは確かだ。なぜなら、S550eが、ワイヤレス充電機能を初めて搭載した量産プラグインハイブリッド車であることは間違いないからだ。
ただ、QualcommのThomson氏はそのような見方には同意しかねるようだ。同氏は「この後早い時期に、S550eと同様のプラグリンハイブリッド車の生産が相次いで始まるだろう。S550eはその先陣を切ったにすぎない」と強調した。さらに同氏は「開発契約の数や自動車メーカーからの見積もり依頼は急速に増えている」と述べた上で、「今後数年以内に、ダイムラー以外の量産車にもWEVCシステムが搭載され始めるだろう」と予測した。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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