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シリコンバレー〜イノベーションを生む気質(1)イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜(8)(1/2 ページ)

ハイテク産業の中心地がボストンからシリコンバレーに移り、今なお成長し続ける理由には、「シリコンバレーの気質」が大いに関係している。ここから複数回にわたり、シリコンバレーの気質を掘り下げていこう。

» 2016年10月20日 09時30分 公開
[石井正純(AZCA)EE Times Japan]

誰もが「アメリカ人」になれる国

 前回、ハイテク産業の成長においてシリコンバレーがボストンを圧倒した理由は、その「オープン性」にあったという話をした。シリコンバレーは、“外国から来た「移住一世」の人々でも、よいアイデアを持って起業し、頑張れば大成功も夢ではない”という、ユニークな環境なのだ。

 ここに1つのエピソードがある。

 かつて、ロナルド・レーガン大統領はこう言ったそうだ。「アメリカ人が日本に引っ越して日本に住むことはできるが、日本人として受け入れられることはあり得ない。フランスに引っ越すこともできるけれど、絶対にフランス人にはなれない。けれども、アメリカに来れば、世界のどこから来ようとも彼らはアメリカ人になることができる」

 レーガン大統領が本当にこう言ったかどうか、確証はない。だが、「先住民以外は全て移民の国」、これがアメリカ合衆国なので、内容は事実といえる。

 実際、米国に引っ越してくる人には、誰にでも成功のチャンスがある。ヨーロッパから引っ越してきた筆者の友人の多くは、英国の階級制度など窒息しそうなヨーロッパのシステムを嫌って、自由な国、自分の能力を十分に発揮でき、成功のチャンスをつかむことができる国である米国に渡ってきた。

 前回紹介した通り、シリコンバレーにある巨大なハイテク企業の創設者(共同創設者を含む)たちの中には、外国生まれの人物が極めて多い。そして、これらの成功企業は、世界規模で雇用の創出に貢献している。例えば、2016年10月の時点での従業員数は、Intelが約11万2000人*)、Alphabet(Googleの親会社)は約6万1000人、Yahoo!は約9400人、といった具合である。中でもGoogleは、約10年前の2005年における従業員数は約6000人だったことから、その急成長ぶりがうかがえるだろう。

*)Intelは2016年4月、従業員を最大で1万2000人解雇することを発表している(関連記事:Intel、最大で1万2000人を解雇へ

シリコンバレーに本拠地を構える巨大なハイテク企業の一例と、その創設者やCEOたち(クリックで拡大)

 こうした企業を設立し、成長させてきた人物たちは、「アメリカなら自分の能力を十分に発揮できる」と、感性に忠実に生き、自己実現を目指してたゆまぬ努力をしてきた人々であろう。シリコンバレーに住んでいると、この文化が当たり前になっているので、毎日特に実感することもないが、ベンチャー企業などの会議に出席し、気が付くと参加者の半分以上が外国から来た人だった、なんてことは日常茶飯事だ。移住一世のパワー、それを普通に受け入れてきた文化がここにはある。

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