Intelは、2016年第1四半期の業績とともに、従業員を最大で1万2000人解雇する構造改革計画を発表した。今後はデータセンター向けとIoT(モノのインターネット)に注力していくという。
これまでPCは、半導体業界のけん引役を担ってきたが、ついにその存在に別れを告げるべき時が来たのかもしれない。PC分野のリーダーであり、PC関連でさまざまな技術を提唱してきたIntelは2016年4月19日(米国時間)、同社の全従業員の11%に相当する1万2000人(最大で)を解雇する計画を正式に発表した。同社の2016年第1四半期(1〜3月期)の売上高と利益は減少したという。これは、2四半期連続の減少となる。
今回発表された人員削減は、数年前から計画されていたとみられる。Intelの前CEOを務めていたPaul Otellini氏は当時、PC事業の低迷による問題で力を失い、現CEOであるBrian Krzanich氏が事業再編のために迎え入れられた。
Krzanich氏は2015年11月に、ライバル企業のQualcommでスマートフォン向けチップセット事業に携わっていたVenkata "Murthy" Renduchintala氏を、自身の右腕としてIntelに迎え入れた。Intelは2016年4月4日、同社に長く務めてきた2人の経営幹部が退職することを発表しているが、Renduchintala氏はこの時に、今回の大規模な人員削減を実行する指示を出したという。
Intelは、2016年第1四半期の業績発表の場において、今回の人員削減計画を明らかにした。同社の売上高は137億米ドルで、前期比で8%減、前年同期比では7%増だった。利益は20億米ドルで、前期比で43%減、前年同期比では3%増となった。
Intelによると、今回の組織再編により、クライアントコンピューティンググループが売上高全体の55%を占めることになるという。成長の原動力となるデータセンターグループは、売上高全体の29%を占める。また、これまで堅調に成長してきた組み込み部門と、新しいIoT事業部門とを統合し、新たにIoTグループを設立したとしている。
さらにIntelは、Alteraを買収したことにより、プログラマブルソリューションズグループも新設した。この他にも、不揮発性メモリソリューションズグループや、Intelセキュリティグループ(旧McAfee)など、さまざまな事業部門を編成している。
一部のアナリストの予測では、「Intelは、データセンター市場では『Xeon』チップによって優位性を確保し、組み込み市場での影響力も増していることから、確固とした地盤を築き、業界をリードしていくだろう」と考えられている。Krzanich氏は、2016年第1四半期の業績を発表した報道向け資料の中で、「当社はこれまで、PC向けチップメーカーとしての位置付けにあったが、今後はクラウドや、数十億個規模のスマート/コネクテッドコンピューティングデバイスを統括する企業へと変化していく」と述べている。
さらに、「このような成長事業の2015年における売上高は、全体の40%となる222億米ドルに達し、営業利益の大部分を占めている。このため、PC事業部門の売上高の減少を大きく相殺する形となった」と述べる。
Intelによると、2017年半ばまでには人員削減を実施する予定だという。世界各国の拠点の統廃合や、自主退職および解雇、事業の見直しなどを並行して進めていく。
Intelは今回の人員削減により、2016年に7億5000万米ドル、2017年半ばまでに年間当たり14億米ドルのコスト削減効果を見込んでいるという。2016年第2四半期には、約12億米ドルの特別損失を計上するとしている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
※訂正とお詫び:掲載当初、2015年におけるIntelの成長事業の売上高を「22億米ドル」と記載しておりましたが、正しくは「222億米ドル」の誤りでした。訂正してお詫び致します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.