これをBAYONETにたたき込み、力ずくで計算させた結果、わが国において「自分の性に違和感を覚える人」は、680人に1人という推論結果をたたき出しました。
上記の例では、ベイズ推論をしたというより、ベイズ推論の条件付き確率の連鎖の結果を導き出した、というものになっています。
この結果は、連載当時に私がかき集めた数値や推定や完全な主観をベースとしているもので、当時も今も、信頼性があるものではありません。
しかし、もし、今、さらに新しい事実(データや因果関係)や加わったのであれば、それを後からバカスカ追加して、ベイジアンネットワークを組み直していけば良いのです。
これが、ベイジアンネットワークの「新しいデータが入ったら、どんどん(確率を)変化させていこうぜ」のノリ、"ベイズ改訂"の実体です。
いずれにしても、現在においても「自分の性に違和感を覚える」の統計的なデータを収集することは絶望的に困難だと思います。まだまだ、「性に対する違和感」に対する世間の理解は十分ではなく、偏見を持つ人が存在する以上、その当人にとって、その違和感を告白する恐怖は、計り知れないものがあると思うからです。
それでも、
「よく分からないけど、違和感を覚え、どうして良いのか分からずに苦しんでいる子どもがいる」
というフレーズと
「あくまで推定の域を出ないが、少なくとも日本のほぼ全ての学校(全校生徒数が800人程度)で、1校当たり少なくとも1人は、その違和感に現在進行形で苦しんでいる子どもがいる」
というフレーズのどちらに価値があるかと問われれば、私は後者の方だと信じています。
しかし、結局のところ、「お前は、一体誰のために『数字を回して』いるのか」と尋ねられれば、私は「自分のためだ」と答えると思います。私は、私自身をだますために、これらの数字を回しているのです。
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