トレックス・セミコンダクターは2017年2月20日、1.0V以下のコア電圧で動作する最先端FPGAやマイコンなどのデバイス向けに高速過渡応答を特長にした同期整流降圧DC-DCコンバーター「XC9273シリーズ」を製品化したと発表した。独自のDC-DCコンバーター制御技術「HiSAT-COT」の第2世代技術を搭載し、高速過渡応答と高精度電圧出力などを実現した。
COT(Constant On Time/オン時間一定)制御だが、オン時間を調節し発振周波数を安定させる――。
トレックス・セミコンダクターは2017年2月20日、独自のDC-DCコンバーター制御技術「HiSAT-COT」の第2世代技術を盛り込んだ出力電流3A、最低出力電圧0.8Vの同期整流降圧DC-DCコンバーター「XC9273シリーズ」を発表した。1V以下の低電圧電源を高精度、高速過渡応答で供給可能な近傍負荷(POL)電源として、産業機器や車載機器などに向けて展開する方針。
XC9273シリーズに採用したHiSAT-COTは、DC-DCコンバーター制御方式として、電圧モード制御、電流モード制御方式に比べ過渡応答性が優れるCOT制御方式をベースにトレックスが独自に開発した技術だ。COT制御は、出力電圧を監視し、出力電圧が基準電圧を下回った場合にスイッチング素子をオンし、出力電圧を一定に保つ。この仕組みにより、高速に負荷変動や入力変動に追従できるという利点を持つ。そのため、FPGAやASICなど負荷変動の大きい半導体デバイス用のPOL電源に向くDC-DCコンバーター制御技術として普及しつつある。
ただしCOT制御方式は、出力電圧の状態に応じてオンするために他の制御方式には搭載される発振回路さえ持たず、スイッチング周波数は一定ではなく大きく変動する。スイッチング周波数が不安定であれば、高度なノイズ対策が要求され電源回路設計難易度が高くなるという大きな欠点を抱えた。
そこでトレックスは、COT制御方式の欠点である発振周波数の不安定さを抑える独自制御技術「HiSAT-COT」を開発。発振回路を持たないCOT制御ながら、入力電圧変動などに応じてオン時間の長短を微調整させ、スイッチング周波数の変動を抑制する機能を備えたCOT制御技術で、POL電源用途のDC-DCコンバーターに展開してきた。
そして、このほど、トレックスは、昨今のPOL電源で求められる技術ニーズに対応した第2世代HiSAT-COTを開発。入力電圧範囲2.7〜5.5V、出力電圧0.8〜3.6Vの最大3A出力DC-DCコンバーターであるVXC9273シリーズなどへの展開を開始した。
「FPGAやマイコン、ASICなどは低消費電力化するため、コア電圧を1.0V以下に引き下げている。動作モードの切り替えもより頻繁に行うようにもなっている。したがって、これらのデバイスに電源を供給するDC-DCコンバーターは、これまで以上に高速過渡応答性を備えながら、出力電圧を高精度に安定化させる必要がある。第2世代HiSAT-COT、XC9273シリーズは、そうしたニーズに応える技術として開発した」(トレックス)
出力電圧の高精度化に対しては、リファレンス電圧回路の温度特性を改良するなどし、−40〜105℃の全動作温度範囲でフィードバック電圧精度0.6V±1.0%を実現した。
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